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外部電源を絶たれた灰色の建屋に、久しぶりに工具の音が戻った。国際原子力機関(IAEA)は18日、送電線修理のためザポリージャ原発周辺での局所的な一時停戦にロシアとウクライナが合意したと発表したとされる。約1カ月に及ぶ外部電源喪失のなかで復旧作業が始まり、燃料冷却を支える安定電源への道がようやくひと筋見えたと映る。ただし詳細文書は現時点で限定的で、緊張は解けていない。
静けさの数時間、修理班が動いた
現地に常駐するIAEAチームの報告によれば、18日に原発周辺で局所的な一時停戦が敷かれ、送電線の補修に向けた初動作業が始まったという。IAEAの提案を双方が受け入れ、作業員が破断箇所の確認と安全確保に着手したとされる。欧州最大の原発をめぐる緊張の狭間に生まれた短い静寂が、危機対応の現実的な一歩として刻まれた格好だ。
ラファエル・グロッシ事務局長は、非常用ディーゼル発電機に依存する状態は「決して持続可能な電源ではない」と繰り返し指摘してきた。ザポリージャの6基は2022年以降、冷温停止が続くが、核燃料の冷却や安全系の維持には外部電源が不可欠である。今回の補修開始は、危機の底で安全余裕を取り戻すための最低条件を回復させる試みといえる。
長引く外部電源喪失、積み上がるリスク
先月23日以降、外部電源の断が続いた背景には、周辺の戦闘による送電網の損傷があるとみられる。双方は相手の攻撃を原因と主張し、責任の応酬が続いてきた。非常用ディーゼルでしのぐ日々が重なるほど、機器の負荷や補給のリスクは増し、想定外の連鎖故障を誘発しかねない。現時点で周辺の放射線量に異常は確認されていないが、余裕は削られ続けている。
今回の外部電源喪失は少なくとも10回目とされ、期間としても最長の部類にあたる。送電線の健全性、開閉所の安全確保、バックアップ線の冗長性――いずれも戦闘の影響を受けやすい脆弱点として浮かぶ。IAEAが現場歩査を重ねてきたのは、こうした綻びが小さなミスや偶発事象と結びつき、大きな事故リスクへと拡大するのを抑えるためである。
責任の応酬と小さな合意、次に問われるもの
ロシアとウクライナは送電線損傷の原因をめぐり互いを強く非難してきた。他方で、IAEAの仲介により「修理のための局所的な一時停戦」に歩み寄った構図が見えてきた。合意の射程は狭く、期限や範囲も限定的とみられるが、電力喪失という最大の脆弱性へ手を伸ばすための最低限の条件が整ったとも言える。脆い合意をどう実務に落とし込むかが鍵になる。
焦点は三つある。第一に、断線区間の早期特定と安全な作業動線の確保。第二に、一次線の復旧と並行したバックアップ線の冗長化である。第三に、修理が砲火で中断されないよう、作業時間帯と空域・地上の危険最小化を双方が順守できるかだ。IAEAは五つの原則の遵守を繰り返し求めてきたが、今回の合意がそれを現場で具体化する試金石となる。