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インド議会は12月18日（現地）、民間企業の参入を認める形で原子力関連法制を改める法案を可決した。長く国主導で閉じていた市場に風穴が開き、報道では投資機会は19兆3000億ルピー規模とも見積もられる。次に問われるのは、建設資金だけでなく、事故時の責任まで含めて「誰がリスクを負うのか」だ。
資金と技術を呼び込む設計、狙いは「10倍」
今回の法案は、原子力発電の事業主体を実質的に国に限定してきた枠組みを緩め、国内民間の参加を可能にする転換点となった。Reutersは、民間や海外勢の資金を呼び込み、原子力発電容量を足元の約8.8GWから2047年に100GWへ拡大する政府目標を後押しする位置付けだと伝える。海外企業はインド企業との提携を条件に参入の道が開かれるという。
ただ、原子力は「建てれば終わり」ではない。用地、燃料調達、人材、長期の保守まで資金拘束が続き、採算は政策と電力市場の制度に左右される。APが伝えたように、化石燃料依存の電源構成を変える手段として期待が集まる一方、次世代炉や小型モジュール炉（SMR、工場生産で建設期間を縮める発電炉）の実装まで含めると、民間が背負うリスクの輪郭をどこまで明確にできるかが要点になる。
争点は「賠償」と「監督」、可決後も火種は残る
焦点の1つが、原子力損害賠償の扱いである。これは事故が起きた場合の補償責任を、事業者、供給者、政府の間でどう配分するかという制度だ。Business Standardなどが伝えた国会審議では、野党側が安全や賠償の実効性を問題視し、慎重審議を求める構図が浮かんだ。Economic Timesは、可決を受けて労組などが抗議行動を計画しているとも報じている。
一方で政府側は、監督体制を法定化し、民間参入後も安全規制は維持できるという立場を示している。可決はゴールではなく、規則整備、運転免許の基準、保険や事故時の資金手当てをどう組み立てるかが本番だ。投資機会の数字が独り歩きしやすい局面だからこそ、地域の受け止めや情報公開の度合いを含め、制度が「事故が起きない前提」で作られていないかを見極める必要がある。
参考・出典
- Indian parliament approves landmark atomic energy bill to open nuclear power to private sector (Reuters, 2025-12-18)
- India's Parliament approves bill to open civil nuclear power sector to private firms | AP News
- インドが原子力法を大幅改正、民間に開放へ－33兆円超の投資機会 | TBS CROSS DIG with Bloomberg
- Power engineers, trade unions and farmers plan nationwide protest against SHANTI nuclear Bill – The Economic Times
- Homepage | Department Of Atomic Energy | India
