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イランのマスード・ペゼシュキアン大統領は2025年12月27日に公開された最高指導者アリ・ハメネイ師の公式サイトのインタビューで、米国、イスラエル、欧州が多方面でイランを追い込んでいるとして、対立を「全面戦争」と位置づけた。6月の軍事衝突や、9月に国連制裁が再びかかった流れの上で、強い言葉が対外姿勢だけでなく国内向けメッセージにもなっている。
「戦争」と呼ぶことで、抑止の線引きを前に出す
インタビューで大統領は、相手側がイランを屈服させようとしているとの認識を示し、次に攻撃を受けるなら、より厳しい対応になると警告した。装備や人員の面で軍は以前より強いとも述べており、「再攻撃のコスト」を先回りして示す狙いが読み取れる。市民の側から見れば、警戒態勢や動員の強弱が、空港、物流、燃料など日常の見通しを左右し得る。
ここでいう戦争は、ミサイルの応酬に限らないという語り口が特徴だ。大統領は、1980年代のイラン・イラク戦争より複雑だと述べ、経済、文化、政治、治安といった複数の面で圧力が重なると訴えた。軍事衝突の記憶を呼び起こしつつ、制裁や情報戦も同じ延長線に置く整理であり、交渉より「包囲」への危機感を強調する形になっている。
制裁「スナップバック」が、欧州との距離も広げた
発言の背景にあるのが、国連制裁の「スナップバック」(制裁の自動復活手続き)だ。国連の説明では、2015年の核合意JCPOA(包括的共同作業計画)を裏づけた安保理決議2231に、合意違反が大きいと参加国が通告した場合に制裁を戻す仕組みがある。英仏独(E3)は2025年8月に手続きを開始し、仏外務省は9月27日に過去の制裁決議が再び効力を持ったとして順守を求めた。EU理事会も9月29日、渡航禁止や資産凍結などを含む措置の再適用を発表した。
論点は、圧力を強めるほど抑止になるのか、反対に強硬な言葉と相互不信を固定するのか、というトレードオフにある。欧州側は「核兵器を持たせない」狙いを掲げる一方、イラン側は制裁再開を含む一連の動きを「戦争」と同列に置き、譲歩の余地を狭めている。企業や金融機関は制裁順守の確認を優先しやすく、貿易や投資の慎重姿勢が続くとの見方もある。残る選択肢は、制裁と安全保障の線引きをどこで止め、対話の枠をどう再設定するかだ。
参考・出典
- イラン大統領、米欧イスラエルが「全面戦争」仕掛けていると主張 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
- Iran president says US, Israel, Europe waging ‘full-fledged war’ on country | Israel-Iran conflict News | Al Jazeera
- UN Security Council rejects bid to continue Iran sanctions relief | The United Nations Office at Geneva
- Iran sanctions snapback: Council reimposes restrictive measures – Consilium
