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21日午前、石破内閣が閣議で総辞職した。7月の参院選の敗北を受け、9月に退陣の意向を示していたが、自民党の新総裁選出と国会での首班指名の段取りが長引き、幕引きはこの日にずれこんだ形である。首相は談話で、少数与党の重圧の中でも誠実に語る姿勢を貫いたと振り返り、次の政権に「連帯と寛容」を託したとみられる。
静かな総辞職の朝、官邸に残った拍手
秋晴れの光が差す官邸で、閣僚らが静かに集まり、21日午前の閣議で総辞職が決まった。形式上の手続きは淡々と進み、昼過ぎ、首相はスタッフの拍手に見送られて官邸を後にした。去り際に「本当にいい仕事をさせてもらった」と語り、短い言葉に1年余の重みがにじんだ。政権の終幕は穏やかで、どこか達観の空気が漂ったと映る。
事の発端は7月の参院選である。与党が議席を大きく減らし、政権の正統性に疑問符がついた。9月に首相は退陣の意向を表明したが、自民党の新総裁選びや連立与党内の調整、臨時国会での首相指名に向けた与野党の駆け引きが絡み合い、着地点を探る日々が続いた。現時点で確認されている範囲では、日程調整が長引いたことが最終局面を押し出した格好だ。
総辞職にあたり、首相は談話を公表し、少数与党の厳しさに触れつつも「国民に誠実に語る姿勢」を強調した。記者団には、分断と対立ではなく、連帯と寛容が重要だと述べたという。与野党の攻防が激しくなる中で、政治の言葉をどう取り戻すか。短いメッセージには、次の政権に託す課題と、自身の政治姿勢を重ね合わせた余韻が残る。
一年余の歩みが残した政策の輪郭
在任中、石破政権は「地方創生」と「防災立国」を看板に掲げた。東京圏から地方への若者移住を倍増させる「地方創生2.0」構想を打ち出し、教育や雇用、住まいの支援を束ねる仕組みを設計したとされる。首都圏への一極集中を和らげる処方箋を具体化しようとする試みで、人口減少の時代に地方の自立をどう描くかという問いを前に進めた意義は小さくない。
災害対応の司令塔づくりも柱だった。各省にまたがる防災機能を束ね、初動から復旧・復興まで一気通貫で担う「防災庁」構想を掲げ、2026年度の創設に向けた準備室を立ち上げた。大規模災害が相次ぐ中、司令塔の明確化と指揮権限の強化は喫緊の課題である。制度設計や法整備、地方との役割分担など詰める論点は多いが、骨格は見えたといえる。
家計と地域に直結する最低賃金では、25年度の引き上げが全国平均で過去最高水準に達したとの見方が広がった。物価上昇と人手不足が続く中で、賃上げのモメンタムを地方へ波及させる狙いだ。中小企業の支援や価格転嫁の徹底が伴わなければ持続しないという指摘も強い。賃上げと生産性向上をどう両立させるか、政策パッケージの運用が問われ続ける。
通商と安全保障、未完の交渉が残した宿題
通商では、日米関税交渉が注目を集めた。相互関税の考え方を軸に、自動車分野の関税水準を巡る協議が進み、大枠で合意に至ったとされるが、具体的な適用や国内手続、第三国との整合など詰めの作業は残されたままだ。国内産業や消費者価格に与える影響も読みづらく、国会審議や情報開示のあり方が今後の焦点に浮かぶ。
背景には、米国の通商・産業政策の転換がある。2025年の政権交代以降、対中関税やサプライチェーン強靭化をめぐる再設計が進み、幅広い分野で見直しが相次いだ。エネルギー政策の優先順位も揺れ、国内物価や雇用と結び付けた「米国第一」の色合いが濃い。こうした動きは日米経済関係の文脈にも影を落とし、交渉の呼吸にも影響を与えたとみられる。
安全保障面では、同盟調整の実務が続く。防衛装備や共同訓練、経済安保分野の連携をどう設計し直すかは、次の政権にも引き継がれる課題だ。財政制約の中で持続可能な防衛力整備をどう描くか、国内の合意形成も不可欠である。通商と安全保障が重なり合う時代に、交渉の一手一手が産業と地域の暮らしに響く重みを帯びている。
次を託すということ
政権のバトンは、党内手続と国会の首班指名を経て渡される。与党は次の顔を選び、連立の枠組みや政策協定の見直しを詰める段階にある。野党は早期の国会論戦を求め、内政と外交の優先順位を問い直す構えだ。政治空白を最小限に抑えつつ、人事と政策の輪郭を早期に示せるかが、新政権の立ち上がりを左右する。
首相が最後に口にした「連帯と寛容」は、対立の言葉が先行しがちな政治過程への小さな楔でもある。社会の亀裂を広げるのはたやすいが、埋めるのは難しい。分断の時代にあって、違いを抱えたまま進む術をどう編み直すか。政権交代のタイミングだからこそ、政治の言葉の使い方が改めて問われる。
地域に根ざした課題の手触りを失わず、国の大きな舵を切ること。石破政権が掲げた地方と防災の優先課題は、次の政権にも確実に引き継がれるべき宿題だ。成長と分配、安保と通商、中央と地方。線引きできないテーマばかりが続くなかで、政治はどこまで現実に寄り添えるのか。新しい日常に向けた一歩が試されている。