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イスラエル軍は9日、レバノン南部の複数地域でイスラム教シーア派組織ヒズボラに属するインフラを空爆し、その中に精鋭ラドワン部隊の訓練施設が含まれると発表した。レバノン国営通信も南部各地での一連の空爆を伝えており、停戦合意から1年余りを経ても、イスラエルとヒズボラの国境地帯では緊張がくすぶり続けている。
国境地帯の住民と平和維持部隊に広がる不安
レバノン南部はイスラエルとの境界線「ブルーライン」に沿って村や農地が連なる。2006年の戦争後、国連平和維持部隊UNIFILとレバノン軍が展開し、2006年採択の安保理決議1701や2024年の停戦合意の下で監視を続けてきたが、砲撃や空爆は断続的に起き、住民は静けさと緊張のはざまで暮らしている。
今回の空爆について、イスラエル軍はヒズボラのインフラやラドワン部隊の訓練施設を標的とし、イスラエル兵や民間人への攻撃準備を阻止する作戦だと説明していると、イスラエル側メディアは伝える。一方で、レバノン国営通信NNAは南部各地での空爆を報じるだけで被害の詳細は乏しく、国連やUNIFILはこうした攻撃が平和維持要員と市民の安全を脅かすと繰り返し警告している。
ラドワン部隊と停戦合意、揺れる力の均衡
ラドワン部隊は、ヒズボラの中でも特別作戦を担う精鋭とされ、イスラエル北部・ガリラヤ地域への浸透や奇襲を想定した訓練を重ねてきたと各種分析で指摘されてきた。シリア内戦などで実戦を経験した戦闘員も多いとみられ、イスラエル政府は国境近くにこの部隊がとどまること自体を容認できないリスクとみなしている。
一方、停戦合意や決議1701はリタニ川以南から武装組織の戦力を引かせ、代わりにレバノン軍が治安を担う構図を想定している。しかし国連は、イスラエルの越境空爆とヒズボラ側の武装継続の双方を違反として挙げており、力の空白は埋まりきっていない。欧州連合がレバノン治安部隊支援を検討する動きも出るなか、今回のような標的型空爆が緊張緩和につながるのか、それとも新たな報復の連鎖を呼ぶのかという問いが、南部の空の下で重く横たわっている。
参考・出典
- イスラエル軍、レバノン南部のヒズボラ拠点を攻撃
- IDF targets Hezbollah launch site, training facilities in southern Lebanon
- Israeli air strikes in south Lebanon violate UN resolution | The United Nations Office at Geneva
- EU looking at options for boosting Lebanon's internal security forces, document says
- Radwan Force – Wikipedia
