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霞が関の会議室に、白いスライドに「世代内、世代間の公平」という文字が浮かんだ。厚生労働省は2025年10月23日、社会保障審議会・医療保険部会で、高齢者の医療費の窓口負担の見直しを含む制度改革の議論を一段と深めた。70歳以上で3割負担とする対象をどう広げるか。保険財政の持続性と、暮らしに寄り添う公平の線引きが問われている。
動き出した「公平」の再設計
部会は2025年10月23日 13:00から15:00に開かれ、議題には「医療保険制度改革」「令和8年度診療報酬改定の基本方針」などが並んだ。厚労省が提示した資料には「世代内、世代間の公平の更なる確保」という見出しが置かれ、議論の軸足が明確に示されたと映る。会場の空気は、制度をどう再設計するかを巡る現実的な検討へと傾いていた。
10月2日、16日の同部会でも医療保険制度改革が議題となっており、10月23日はその延長線上に位置づく。短い間隔で論点を重ねる運びから、年内の政策整理に向け、工程が加速している気配がある。診療報酬の基本方針と保険制度の見直しを並行して詰める構図が浮かぶ。
背景にあるのは、患者負担と給付のバランスをどう再調整するかという、避けて通れない課題である。資料のタイトルが示す通り、世代の中と世代の間、それぞれの公平をどう保つかが核心だ。単なる負担増の是非ではなく、制度が支える暮らしの具体にどう届くかが問われているといえる。
どこまで3割に広げるのか
現行制度では、70~74歳は2割、75歳以上は1割が原則である。一方で、一定の所得がある「現役並み所得」の高齢者は3割を負担する仕組みとなっている。今回の焦点は、この3割負担の対象をどこまで広げるか、あるいは基準の置き方をどう見直すかである。基準が変われば、家計と医療機関の現場に及ぶ波は小さくない。
論点は多岐にわたる。現役世代の保険料負担の増加を和らげる観点から、支払い能力に応じた応能負担を強めるべきだという声がある。他方で、慢性疾患の通院が続く高齢者では、窓口での支払いの積み上がりが受診行動に影響しうる。段階的な負担設定や、収入・資産の把握方法の精緻化など、設計の細部が制度の顔つきを決めるとみられる。
外来と入院での影響の現れ方、高額療養費制度との接続、負担増に対する経過措置の滑らかさも鍵である。医療機関の窓口実務や保険者の事務負担に無理が生じれば、現場にしわ寄せが出る。公平の名のもとに何を優先順位として置くのか、数字の裏側にある受診行動や地域差まで視野に入れた検討が欠かせない局面である。
世代間の均衡と制度の持続性
高齢化の進行と医療の高度化で医療費は増勢をたどる。現役世代の保険料はじわりと重くなり、負担感は広がっている。こうしたなかで「誰が、どれだけ、どのように」支えるかの問いは避けられない。患者負担と保険給付のバランスを定期的に見える化し、必要なら調整するという発想が、今回の議論の土台にあると受け止められる。
同日の議題に「令和8年度診療報酬改定の基本方針」が入ったことは象徴的である。費用の伸びや医療の質の確保と並行し、負担の姿を描き直す作業は一体で進む。短期の家計影響だけでなく、中期の保険財政や地域医療構想とも折り合いを付ける必要がある。改革の重心は、歳出管理とアクセス確保の両立に置かれていると映る。
決まるのは基準値だけではない。制度のわかりやすさ、周知の方法、格差を広げない配慮、そして移行のなだらかさ。患者と家族、医療現場、保険者が過度な負担なく移れる道筋が重要だ。公平という言葉が、家計や現場で実感に変わるかどうか。年末に向けて続く審議の一つひとつが、その答えを形作っていく。
