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マイクの前に立った赤沢経済産業相は、「必ず成功させなければならない」と声を強めた。次世代半導体メーカーのラピダスに対し、政府が1000億円を株式出資する方針を決めたのである。情報処理推進機構を通じて国が株主として関与し、2ナノメートル級の最先端半導体の国産化と、経済安全保障の強化を同時にねらう大きな一歩だ。
政府出資と巨額支援、どう使われるのか
経産省は、ラピダスが提出した事業計画を承認し、2025年度中に1000億円を出資する。出資主体は独立行政法人情報処理推進機構で、同機構がラピダス株を取得し、将来の株式上場後に売却して公的資金を回収する構造だ。これとは別に、2026年度には1500億円超の追加出資や、製造装置などを現物で出資する案も示されており、国が長期にわたり経営リスクを分担する仕組みになっている。
資本参加に先立ち、政府は補助金というかたちでも多額の資金を投じてきた。25年度には研究開発や生産管理システムの整備向けに最大8025億円を追加支援し、これまでの決定分と合わせた補助額は1.8兆円を超える。さらに27年度までに委託費として約2.6兆円を投じる計画もあり、ラピダスの累計支援枠は約2.9兆円規模に達する見通しだ。単なる「補助先」から「共同出資者」へ、国の立場はより踏み込んだものへ変わりつつある。
2ナノ量産と上場、7兆円超投資の賭け
ラピダスがめざす2ナノ半導体とは、回路の幅がおよそ2ナノメートル、つまり1メートルの10億分の1のさらに半分ほどという極めて微細なチップで、スマートフォンや生成AI向けの頭脳として期待されている。事業計画では、北海道千歳市の工場で2027年度後半に量産を始め、事業を軌道に乗せたうえで2031年度ごろの株式上場を目指す。累計投資額は7兆円超に達する見通しで、世界大手と肩を並べるにはそれでもぎりぎりの水準だとされる。
こうした大規模投資の背景には、半導体を他国に依存しすぎれば安全保障上の弱点になるとの危機感がある。国内で高性能品を量産できれば、サプライチェーンの分散だけでなく、設計や製造のノウハウを国内に蓄積できる。政府は公的支援を呼び水に自動車やITなど民間からの出資を広げたい考えだ。一方で、採算がとれなければ巨額の国費が回収できないとの懸念も根強く、国策としての意義と財政負担のバランスをどう図るかが今後の焦点になる。
千歳の工場では、雪に覆われる季節を何度も越えながら建設と設備搬入が続くことになるだろう。静かな滑走路の向こうで積み上がる鉄骨が、日本が未来の産業をどこまで自ら手繰り寄せられるのかを、無言のまま映し出しているように見える。
