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会見場でマイクに向かったのは、就任間もない経済安全保障担当相の小野田紀美氏だった。18日の閣議後記者会見で小野田氏は、中国政府が日本への渡航自粛を呼びかけた動きを取り上げ、「経済的な圧力に頼る国への過度な依存はリスクだ」と語った。台湾情勢を巡る首相答弁への対抗措置と受け止められる今回の対応を前に、観光や留学を含む人の往来までが安全保障の議題に乗りつつある。
中国の渡航自粛と首相答弁の波紋
中国外務省は14日、自国民に対し「当面の間」日本への渡航を控えるよう求め、日本での留学を検討する人にも注意を促した。きっかけとなったのは、高市早苗首相が国会で行った台湾有事に関する答弁だ。首相は、台湾周辺での武力衝突が日本の存立を脅かす事態に発展しうるとして、集団的自衛権の行使を認める「存立危機事態」に該当し得るとの見方を示した。日本側の法的整理に関する説明が、隣国からは対抗措置という形で跳ね返ってきた格好である。
18日の会見で小野田氏は、この渡航自粛を「気に入らない発言があるとすぐに経済面で圧力をかける行為」と位置づけたうえで、そのような相手国の市場や人の流れに日本経済が偏って依存することの危うさを強調した。発言では、半導体や部品の供給網といったサプライチェーンだけでなく、観光産業も同じように外的要因で揺さぶられ得ると指摘した。経済安全保障を担当する大臣として、外交上の摩擦が企業や地域の生活に直結する現実を示した形だ。
経済的威圧と経済安全保障とは
小野田氏が用いた「経済的威圧」という言葉は、関税引き上げや輸出入規制、渡航制限や投資の停止など、経済的な手段を使って相手国の政策変更を迫る行為を指す。軍事力を用いないため一見穏やかに見えるが、観光客が途絶えれば地域経済は大きな打撃を受け、重要な物資が止まれば企業活動もすぐに制約される。近年はサプライチェーンが世界規模で細かく分業されており、特定の国への依存が高いほど、こうした威圧の影響は広がりやすい。だからこそ、どこまで依存するのかを政治の側が常に点検する必要がある。
経済安全保障とは、重要な物資や技術、インフラが特定の国や企業に握られ、日本の意思だけでは守れなくなる状態を避けるための取り組みを指す。小野田氏は就任会見でも、サプライチェーンの強靱化や重要技術の流出防止を優先課題に挙げ、同盟国との連携を深めながら体制を整える考えを示していた。今回の発言は、その問題意識が観光や留学といった人の往来にも及ぶことを示したものだと言える。経済的なつながりを断ち切るのではなく、どこに脆さがあるのかを見極め、多様な選択肢を確保しておくことが、これからの日本に求められている。
観光客の行き来という日常的な風景の背後で、国と国との距離感をどう保つのかという静かな問いが積み重なりつつある。
