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厚生労働省が12月2日に公表した2024年の国民健康・栄養調査で、20歳以上で糖尿病が強く疑われる人が推計約1100万人に達したことが明らかになった。2016年の前回調査からおよそ100万人増え、成人のおよそ8人に1人が該当する計算だ。一方で、血糖値が高めだがまだ発症には至っていない「予備群」は約700万人と減ってきている。職場や自治体の健診で「境界」と言われた世代が、いつのまにか本格的な治療を要する段階に移りつつある現実が浮かぶ。
「予備群」は減っても、進行した糖尿病が増える理由
今回の調査では、血液検査で過去数か月の血糖状態を示すヘモグロビンA1cを測定し、基準値を超えた人や治療中の人を「糖尿病が強く疑われる」と判定している。その割合は全体で12.9%に上り、男性は女性の約2倍という結果だった。診断名が付いていなくても、日々の食事や運動習慣の積み重ねが、静かに糖尿病の線を越えている人が少なくないことを示す。
一方、A1cがやや高いだけの「糖尿病の可能性を否定できない者」、いわゆる予備群は約700万人と、ピークだった2007年からほぼ半減した。それでも、強く疑われる人と合わせると約1800万人にのぼり、日本人の大きな塊が血糖コントロールの課題を抱えている構図は変わらない。予備群が減り本格的な患者が増える背景には、高齢化で時間をかけて進行したケースに加え、健診で早期に拾い上げられる人と、通院や生活改善が続かず悪化してしまう人との「二極化」も透けて見える。
こうした数字は、医療現場だけの問題ではない。40代で「少し高めだから様子を見ましょう」と言われた人が、仕事や介護に追われるうちに通院のタイミングを逃し、60代になって初めて糖尿病と告げられるケースは珍しくないと、各紙の取材に応じた専門医は指摘している。血糖値は痛みが出にくく、本人の自覚も薄いため、家族や職場が生活リズムを一緒に整えられるかどうかが、数字の行方を左右する。
国の目標と現場のギャップ、誰が支える血糖コントロール
政府の健康づくり計画「健康日本21(第3次)」では、現状のままなら2032年度に糖尿病が強く疑われる成人は約1448万人に達すると試算し、これを1350万人に抑える目標を掲げている。今回判明した1100万人という数字は、すでに目標値の8割を超えており、今後10年弱で増加ペースを鈍らせなければならないことを意味する。予防の中心に位置づけられてきた特定健診や特定保健指導だけでは、生活や働き方が多様化する中で全ての層をカバーしきれていない現実もある。
自治体では、管理栄養士による教室や保健師の個別訪問を通じて、食事と運動の両面から血糖を下げる支援を続けている。企業の健康保険組合も、オンライン栄養指導やスマートフォンアプリを活用した歩数イベントなど、働きながら取り組みやすい仕組みを模索している。だが、長時間労働や単身赴任、ひとり親世帯など、そもそも生活の土台が不安定な人ほど支援の網からこぼれがちだ。医療費の増加を抑えたい国の思惑と、日々の暮らしを優先せざるを得ない個人との間に、静かな緊張が走っている。
同じ調査では、1日あたりの食塩摂取量が平均9.6gと依然高く、喫煙率も14.8%にとどまるなど、糖尿病と密接に関わる生活習慣全体の改善が道半ばであることも示された。血糖だけを個人の自己管理に委ねるのではなく、減塩しやすい商品設計や、歩きやすい街づくりといった環境整備をどこまで進められるかが、今後1100万人という数字の行方を大きく左右するだろう。
