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政府がインテリジェンス機能の強化に向け、新たに情報活動を専門とする担当相の設置を検討している。高市早苗首相が司令塔となる「国家情報局」と、関係閣僚による「国家情報会議」創設を掲げ、9日に政府関係者が動きを明らかにした。省庁ごとに分散してきた情報を一元的に集約する狙いだが、市民の監視強化や権利とのバランスをどう確保するのかが問われている。
市民監視への懸念と、求められる歯止め
海外では米CIAや英MI6などの情報機関がテロやサイバー攻撃への備えを担う一方、過剰な監視や秘密主義への批判も絶えない。日本でも国家情報局が警察庁や公安調査庁などの情報を集約すれば、捜査対象でない市民の行動やネット上の発信まで把握されるのではないかとの不安が広がる可能性がある。インテリジェンス強化は安全保障の強化と引き換えに、自由な社会の土台を揺るがし得るからだ。
個人情報保護法や通信の秘密を定めた憲法21条との整合性も、早い段階から詰めておく必要がある。特定秘密保護法の運用では、国会のチェックが十分かという議論が続いてきた経緯がある。今回の担当相と国家情報会議が生まれれば、情報収集の範囲や保存期間を法律で明確にし、第三者による監視や国会報告の仕組みをどう設けるかが、生活者の安心を左右する。権限の拡大と同時に、透明性と抑制の仕組みづくりが欠かせない。
分散する情報を束ねる狙いと、日本の宿題
現在、日本のインテリジェンスは内閣情報調査室をはじめ、外務省、防衛省、警察庁、公安調査庁など複数機関に分散している。内調は各機関から上がる情報を取りまとめ首相に報告する役割を担うが、大規模災害や安全保障危機の際、誰が最終責任を持って判断するのか分かりにくいとの指摘があった。共同通信やNippon.comの報道では、内調を格上げして国家情報局を設け、局長を国家安全保障局長と同格とする案が軸と伝えられている。
高市政権が構想する国家情報局と担当相は、こうした分散した機能を「一つの窓口」に集め、対外情報力を底上げしようとするものだ。国家情報会議では、外交・安全保障や経済安保などを担う閣僚が集まり、共有された分析をもとに対応方針を議論する場となることが想定される。一方で、省庁ごとの文化や縦割りを乗り越えて情報共有を進められるのか、専門人材をどこまで集められるのかといった課題は残る。拡大する権限に見合う説明責任を果たせるかどうかが、新たな情報体制への信頼を左右しそうだ。
