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安全保障を助言する立場の官邸関係者が「日本は核（兵器）を保有すべきだ」と私的に述べたとされ、政界がざわついている。野党は12月19日、発言の是非を論じる前に罷免を求め、政府は非核三原則の堅持を前面に出した。戦後、語られること自体が忌避されてきた核の問題は、内容ではなく「口にした事実」を巡って、政治の思考停止を映し出している。
罷免要求が示すもの、被爆地の時間感覚
テレビ朝日によると、立憲民主党の野田代表は「個人的意見」「オフレコ」であっても、首相の近くで安保政策を助言する立場の人物が核保有に言及した点を問題視し、辞任が妥当だとの考えを示した。共産党も罷免を要求し、発言の影響を政権の姿勢と切り離して扱えないとしている。
同じくテレビ朝日では、長崎の被爆者団体の会長が、核兵器をなくす方向で日本が役割を果たすべきだとの趣旨で批判したと伝えた。核をめぐる議論は、理屈の勝ち負け以前に「誰が、どの席で口にしたか」で現場の受け止めが変わる。沈黙を前提に保たれてきた線を、政権中枢の言葉が踏んだという感覚が、政治不信を増幅させている。
沈静化を急ぐ政府、残る「議論」の出口
政府は火消しを急ぐ。Reutersが伝えたところでは、木原稔官房長官は定例会見で核政策は変わらないと述べ、発言者の進退には踏み込まなかった。非核三原則は「持たず、つくらず、持ち込ませず」を柱にするが、ひとことで言えば「国家として核を装備しない」ことを対外的に約束する政治の骨格だ。
一方で、議論の入口そのものを閉ざそうとする動きも目立つ。日刊スポーツによると、河野太郎氏はXで、特定の意見をタブー視して排除する姿勢に疑問を呈した。非核三原則を政策として堅持することと、現実の安全保障環境について思考停止に陥らないことは、本来は別の次元の話だ。にもかかわらず、発言の是非を超えて「語ったこと自体」を断罪する空気が広がれば、政治は説明責任よりも沈黙を選ぶようになる。戦後日本が抱えてきた核をめぐる重さは、議論を禁じる理由ではなく、むしろ丁寧な言葉で語り続けるべき理由のはずだ。失望の民意が届くかどうかは、結論以前に、異論を含む議論の場を政治が自ら閉じていないかにかかっている。
