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在留外国人が日本で暮らし続けるために欠かせない在留資格の変更や永住許可の申請手数料が、来年度中にも大きく上がる見通しだ。政府は欧米並みの水準への引き上げを検討し、増えた収入を外国人受け入れ策の財源に充てる方針を示している。在留手数料の急騰で誰がどこまで負担するのかを考えたい。
在留外国人と雇用企業にのしかかる新たなコスト
現在、在留資格の変更や在留期間の更新にかかる手数料は窓口申請で6000円、永住許可は1万円と定められている。1人分だけ見れば数千円程度でも、数年ごとに更新が必要な制度のもとでは、家族や子どもを含めた世帯単位では負担感が大きい。約396万人まで増えた在留外国人の多くが、この支払いを繰り返し求められている。
政府が検討する新たな案では、在留資格の変更や1年以上の在留期間の更新手数料を3万～4万円程度に引き上げる方向とされる。仮に4人家族全員が更新する場合、一度の手続きで十万円近い出費になり得る。多くの企業では従業員の在留手続き費用を会社側が負担しており、中小企業の人件費計画にも影響が及ぶ可能性が高い。
欧州では同程度かそれ以上の手数料を課す国もあるが、語学教育や就労支援を手厚く提供する例が多い。日本でも増収分を日本語教育や相談体制の強化に回すとされるが、利用者が「負担に見合うサービス」と感じられるかはまだ見通せない。在留期間が長い在留資格へ早めに切り替え、更新回数を減らそうとする動きが企業や外国人の間で強まる可能性もある。
政府が大幅引き上げに踏み切る背景
背景には、在留外国人の急増で入国審査や在留管理の業務が膨らみ、体制整備の財源が不足しているという事情がある。出入国在留管理庁は2025年4月にも物価高騰などを理由に手数料を引き上げたが、それでも人員やシステム投資には足りないとみられている。政府は新たな増収分を審査の迅速化や日本語教育、不法滞在対策などに充てる考えだ。
一方で、現在の法律では在留手数料の上限が原則1万円と定められており、大幅な値上げには法改正が必要となる。時事通信などの報道によれば、政府は永住許可の上限を大きく引き上げる案を与党側に示し、来年の通常国会への関連法案提出を視野に協議を進めている。手数料を「サービスの受益者が負担する財源」と位置づける発想が、財政制約の厳しい中で強まっている。
ただ、高額の手数料は長期的な定住を望む人ほど打撃が大きくなる。欧州では難民や低所得層向けに減免措置を設ける国もあり、日本でも同様の配慮がなければ、家計を圧迫して申請を先送りする人が増える懸念がある。行政のコスト回収と、外国人が安心して生活基盤を築ける環境づくりをどう両立させるかが問われている。
社会全体に広がる波紋と残された選択肢
在留資格の取得や更新にかかる費用が大きくなれば、日本で働くことをためらう人も出てくるだろう。人手不足が深刻な介護や建設、製造業では、採用競争力の面で他国に見劣りするリスクがある。地方自治体にとっても、地域を支える外国人住民が減れば、学校や地域活動での多文化共生の取り組みにも影響が及びかねない。
一方で、制度設計次第では負担を平準化する余地もある。例えば、在留期間が長い在留資格には相対的に低めの手数料を設定したり、企業が負担する費用を税制上優遇したりする考え方がある。オンライン申請を拡大して事務コストを下げ、その分を手数料の抑制や相談体制の充実に振り向ける選択肢もある。
今回の見直しは、外国人受け入れのコストを誰がどこまで負担するのかを社会全体で問い直すきっかけになる。在留手数料の大幅引き上げが、単なる「関門の強化」に終わるのか、それとも共生のための投資として納得感を得られるのかは、今後の議論と制度設計にかかっている。
