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日本の造船業が、官民一体で立て直しに動き始めた。2025年10月21日に発足した高市早苗政権の下で、与党内では1兆円規模の基金創設を軸に議論が進み、政府も「造船業再生ロードマップ」の策定を掲げる。競争相手の補助金と設備増強に押されてきた産業に、次の手が打てるかが問われる。
現場が欲しいのは「受注」より「造れる体力」
造船は受注が戻っても、すぐに生産が増える産業ではない。熟練工の確保、部材の供給網、ドックの稼働率、設計のデジタル化など、工程のどこかが詰まると納期が崩れる。中国、韓国が政府主導で投資を重ねるなか、日本側は「造る力そのもの」を取り戻す局面に入った。
与党のヒアリングでは、日本の世界シェアが1990年代の約4割から、足元では8%まで下がったとの説明が示された。業界側は建造量を引き上げる政府目標に合わせ、国内メーカーが合計3500億円の設備投資を計画しているという。基金が狙うのは、造船所だけでなく周辺企業も含めた「生産基盤の継ぎ目」を太くすることだ。
1兆円基金とロードマップ、問われる使い道
共同通信は2025年11月14日、政府が総合経済対策に造船業再生を盛り込み、官民で1兆円規模の投資を目指す方針だと報じた。複数年度で支援する基金案も浮上し、2025年度補正予算への計上が調整されている。別報道では、年内に再生ロードマップを策定する構えも伝えられている。
支援の中身は、単なる設備の更新にとどまらない。米国との交渉や経済安全保障の観点からも造船は位置付けが変わりつつあり、政府は休眠ドックの再整備や新設支援、日米での砕氷艦の共同開発構想も取り沙汰されてきた。基金とロードマップが「補助金競争」ではなく、技術と人材を積み上げる設計になるかが、復権の成否を左右する。
