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防衛省統合幕僚監部は12月11日、航空自衛隊と米軍が10日に日本海上空で共同訓練を実施したと公表した。米空軍のB-52戦略爆撃機2機に対し、空自のF-35とF-15戦闘機が各3機ずつ編隊を組み、周辺空域での防空や護衛を想定した手順を確認したとされる。中国やロシアの軍用機が日本近傍で活動を強める中、日米同盟として抑止力と連携態勢を「見える形」で示す狙いがにじむ。
日本海上空で示された抑止力の「見える化」
今回の訓練では、日本海の広い空域で日米の戦闘機と爆撃機が合流し、編隊飛行や防空作戦を想定した動きを繰り返したとみられる。長距離打撃能力を持つB-52と、迎撃や護衛を担う空自のF-35・F-15が連携することで、日米でどのように役割分担し、情報を共有するかを事前に擦り合わせる場になった。
高度の高い訓練飛行は地上からは見えにくいが、日本海側の沿岸では航跡やエンジン音に気付いた人もいただろう。日本各地にはレーダーサイトや航空基地が配置され、平時から周辺空域の監視が続いている。そこに米軍の戦略爆撃機が加わることで、机上の計画だけでは確認しきれない指揮命令や無線手順まで、実際の飛行を通じて検証できる。
防衛省は、こうした訓練を通じて日米両軍の即応態勢と同盟の抑止力・対処力が一層高まると説明する。一方で、爆撃機の飛来は周辺国からも注視され、地域の緊張感を強めかねない側面がある。住民にとっては、守りを固めているという安心感と、軍事的なにらみ合いが続く不安とが同時に突き付けられる構図でもある。
中露の圧力の中で問われる危機管理
今回の共同訓練の背景には、中国とロシアが日本周辺で実施した一連の共同飛行がある。9日には両国の爆撃機が東シナ海から四国沖の太平洋にかけて長距離飛行し、航空自衛隊がスクランブル発進して対応した。6日には中国軍機による射撃管制レーダー照射事案も起きており、日本政府は相次ぐ行動を「示威的だ」と批判、米国も懸念を公に示してきた。
こうした圧力に対し、B-52との共同訓練は、力による一方的な現状変更を認めないという日米の姿勢を周辺国に示すメッセージ色が強い。防衛省は、訓練を通じて日米が決意と準備態勢を再確認したと説明しており、米側にとっても同盟国防衛へのコミットメントを具体的な行動で示す機会となった。
一方で、各国軍用機の飛行ルートが重なれば、誤認や偶発的な接触のリスクは高まる。専門家の間では、抑止力を高めるだけでなく、中露との間でホットラインや行動ルールを整備し、透明性を確保することが不可欠だとの指摘もある。日本海上空の訓練は、緊張が高まる環境で安全をどう守るのかという課題を、日米両国と地域社会に突き付けている。
参考・出典
- US nuclear-capable bombers fly with Japanese jets after China-Russia drills, Tokyo says
- Russian bombers join Chinese air patrol near Japan as Tokyo-Beijing tie strains
- Chinese and Russian bombers hold joint drill near Japan in ‘show of force'
- 中ロ共同飛行、四国沖で初＝政府、「示威行為」と重大懸念
- Japan Ministry of Defense Statement on the Radar Incident against Japan Air Self-Defense Force Aircraft by Chinese Military Aircraft on Dec. 6th
