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記者からの質問が続く会見場で、日本貿易振興機構(ジェトロ)の担当者が静かに紙をめくった。2025年11月20日、同機構が関わる中国でのイベントなどが、これまでに24件取りやめになったと明らかにしたのである。きっかけは、高市早苗首相が国会で台湾有事を「存立危機事態になり得る」と述べ、中国側が強く反発した一連の動きだ。数字だけを見れば小さく映るかもしれないが、現場では準備を進めてきた担当者や参加予定だった日本企業の予定が相次いで狂い始めている。
24件の中止が映し出す現場の揺らぎ
ジェトロによると中止となったのは、中国の地方政府と連携して開く予定だった投資セミナーやビジネス商談会、現地企業との交流イベントなどだという。さらに、中国側から日本を訪れる予定だった訪問団の受け入れも取りやめが出ている。いずれの事例も日本側が断ったのではなく、「中国側の事情」と説明されており、政治的な緊張がビジネスの入り口で静かにブレーキをかけている様子がうかがえる。
こうしたイベントは、中小企業を含む日本企業が現地市場の手触りを確かめる貴重な場であり、単なるカレンダー上の予定以上の意味を持つ。開催都市の行政と共催するケースも多く、自治体レベルのネットワークづくりにも直結してきた。石黒憲彦理事長は会見で、中国との連携事業自体は「粛々と進める」と述べ、政治状況と実務をできるだけ切り離す姿勢を示した。現場では、今後も追加の中止が出る可能性を意識しつつも、既存のパイプを保とうとする慎重な調整が続いている。
高市発言と中国の対抗措置、企業は「静かな継続」を模索
事態の出発点となったのは、11月7日の衆院予算委員会での高市首相の答弁だ。安全保障関連法で定める「存立危機事態」とは、日本の存立が脅かされ国民の権利が覆される明白な危険がある場合に、限定的な集団的自衛権の行使を認める枠組みである。台湾での武力衝突がその対象となり得ると首相が言及したことで、中国側は「武力介入の示唆だ」と受け取り、外務省報道官が発言の撤回を公式に求めるなど、外交面での圧力を強めてきた。
中国政府は、日本への渡航を控えるよう国民に注意喚起し、日本への留学も慎重に検討するよう呼びかけたと報じられている。日本側も外務省の局長級を北京に派遣し、首相発言は従来方針の延長線上にあると説明して事態の鎮静化を図っている。一方で石黒理事長は、日本企業には「事態を見守りながら事業を淡々と続ける」ことが現実的だとの考えを示した。急激に冷え込む政治の空気とは対照的に、現場のビジネスは細いながらも続く往来を手放さないよう、静かな模索を続けている。