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ＪＲ東海は10月29日、リニア中央新幹線（品川―名古屋）の総工事費見通しを11.0兆円へ引き上げた。2021年公表の7.04兆円から約4兆円増。資材・労務費の高騰や難工事の増加が主因で、当面の開業時期は静岡工区の停滞もあり不透明な状況が続く。
増額の背景と内訳
今回の見直しは、近年の物価高と工事難度の上昇を踏まえたものだ。追加約4兆円の内訳は、資材・労務費の上振れが約2.3兆円、山岳トンネル等での難工事対応が約1.2兆円とされ、設備・構造の見直しなど仕様の深度化による増加も一部含む。総工事費の推移は、当初見積もりの5.52兆円から2021年に7.04兆円へ、そして今回11.0兆円へと段階的に拡大してきた。コスト増は世界的な資材価格の上昇、地盤条件への追加対策、施工計画の精緻化が重なった結果であると解される。数字が一段落ち着くまで、発注単価・工程の精査や設計合理化の余地を継続的に探る局面が続いている。
開業時期と残る課題
現時点で確認されている範囲では、静岡工区のトンネル掘削が着工できておらず、工程全体の先行きに影響が及んでいる。一部報道によれば、開業は「早くても2035年以降」との見方が示されており、スケジュールの不確実性はなお残る。コスト面では、インフレ環境が長期化すれば更なる膨張リスクを孕む。建設の進捗に応じたリスク評価の更新、工法・資機材の最適化、契約スキームの工夫など、原価管理と工程管理の同時強化が鍵となる。沿線の受け入れ体制や環境面の調整を着実に進めつつ、財務健全性を保った資金確保と、将来の需要見通しを織り込んだ計画運営が求められている。
