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マイクの前に立った花角英世知事が、静かに言葉を区切った。21日午後、新潟県庁での臨時記者会見で、東京電力柏崎刈羽原発6号機の再稼働を認める考えを示したのである。2011年の福島第一原発事故後止まったままの東電の原発が、ようやく動き出す入り口に立った。県内では賛否が割れる中で、長年先送りされてきた判断が一歩前に進んだ瞬間だった。
知事判断と県議会 再稼働への政治プロセス
花角知事は会見で、原発の安全性向上に不断に取り組むことや事故時の避難計画の充実など7項目について、国に確実な対応を求めると説明した。そのうえで、自らの判断に沿って知事職を続けることの是非を、12月2日から22日まで開かれる県議会に諮る考えも明らかにした。
県議会では知事を支える自民党県議団が単独で過半数を占め、再稼働への同意が可決される公算が大きいとみられている。議会が賛成すれば、知事は国と東京電力に地元同意を正式に伝え、年内に手続きを終える段取りだ。東京電力は10月末に6号機の検査を終え技術的な準備が整ったと公表しており、使用前検査などが順調なら年度内の起動も視野に入る。
長期停止の背景と県民世論 信頼回復への模索
柏崎刈羽原発は福島第一事故後、2012年3月までに7基すべてが止まった。6、7号機は2017年に原子力規制委員会の審査に合格したが、その後、テロ対策の不備が次々と見つかり、規制委は2021年に事実上の運転禁止命令を出した。2023年末に命令が解除され、東京電力の原発としては事故後初めての再稼働が視野に入った。2024年3月には斎藤健経済産業相が県庁を訪れ、再稼働への理解を改めて要請している。
一方で、県民の受け止めは一枚岩ではない。県が実施した意識調査では、東京電力がこの原発を運転することに不安を感じると答えた人が7割近くに達した。それでも知事は「正確な情報提供と安全・防災対策の周知を続ければ理解は広がる」と語り、全30市町村長との懇談や公聴会を重ねてきた。
