AI×ロボで“止まらない工場”へ　キオクシアが予知保全で稼働率最大化を狙う

キオクシアホールディングスは、2029年度までに主力工場を「365日24時間」止めずに動かすスマートファクトリーへ進化させる方針だ。AIやロボットで設備保全を自動化し、トラブルの兆候を事前に捉える予知保全を組み合わせて、装置の稼働率と投資効率を極限まで高める構想である。巨大なクリーンルームが静かに動き続ける未来像を見据え、現場と経営の両面で長期的な変革が始まっている。

現場で変わる仕事と求められるスキル

24時間連続で動かす工場では、装置が止まってから駆け付けて直す仕事よりも、常時モニタリングと予兆検知の比重が増す。キオクシアは、製造装置のメンテナンスを含むさまざまな作業をAIやロボットに担わせ、人は異常のパターンを見極める役割へと移行させようとしている。2025年度までには、現在進めているデータ活用による省人化を一段と強化し、夜間や休日も含めて少人数でラインを見守れる体制づくりを急ぐ。

こうした取り組みの舞台となる四日市工場は、キオクシアの公式サイトでも世界有数のフラッシュメモリ拠点として紹介されている。2005年に300ミリウエハーの量産を始めて以来、自動搬送や装置制御の自動化を積み上げてきた歴史があり、その延長線上に24時間連続稼働の構想がある。現場の技術者には、工具だけでなくデータ解析やアルゴリズムの仕組みを理解する力が求められ、従来とは異なるスキルセットへの転換が避けられない。

段階的なスマート化と投資効率のねらい

スマートファクトリー化は、一足飛びに完成形を目指すのではなく、段階的に高度化していく。まずは既に蓄積してきた膨大な製造データを生かし、省人化と遠隔監視の精度を上げる。そのうえで、装置ごとに最適な予知保全モデルを構築し、止まる前にメンテナンスを打つ仕組みを広げていく考えだ。装置の稼働時間がわずかに伸びるだけでも、半導体工場のように巨額の設備投資を必要とするビジネスでは、投下資本の回収スピードに大きく影響する。

EE Times Japanなどの技術系メディアは、四日市工場で新たな製造棟が稼働し、生産能力が高まっていると伝えている。生産規模が大きくなるほど、ひとたびラインが止まった際の損失は膨らみ、24時間安定稼働と予知保全の重要性は増す一方だ。その裏側では、システム障害やサイバー攻撃が全体に波及するリスクへの備えも欠かせない。キオクシアの構想は、設備投資の効率化だけでなく、人と機械の役割分担を見直しながら高度な自動化と安定運転を両立できるかを探る、長期的な実験でもある。

参考・出典

• 「30億件のデータ×AI」で進化し続ける巨大スマートファクトリー フラッシュメモリの革新を生み出すキオクシア四日市工場 | KIOXIA – Japan (日本語)
• 四日市工場がRBA監査でプラチナ・ステータスを取得 | キオクシアホールディングス株式会社
• キオクシア四日市工場 第7製造棟で量産を開始：162層3D NANDは23年初頭に出荷へ – EE Times Japan
• キオクシア四日市工場第7製造棟の機器連結工事を受注～世界最大級フラッシュメモリ工場の生産能力増強を支援～: お知らせ | NECファシリティーズ株式会社
• キオクシア四日市工場 新・第2製造棟でオンサイト型自家消費太陽光発電サービスを開始 | 三井住友ファイナンス＆リース株式会社のプレスリリース