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韓国の李在明大統領が、宗教団体への「解散命令」を検討するよう政府に指示した。12月2日の閣議で日本の旧統一教会の事例に言及し、宗教の政治介入を問題視したものだ。前政権との癒着疑惑や幹部の贈賄裁判も進む中、宗教と政治の線引きを誰がどう決めるのかが問われている。
信者と有権者にのしかかる宗教と政治の癒着
李大統領は2日の閣議で、宗教団体が政教分離の原則に反して政治に関与した事例が韓国にあると指摘し、「日本では解散命令が出ている。一度検討してほしい」と述べた。特定の団体名は出さなかったが、政府に対し、宗教と政治の距離の取り方を制度面から見直すよう促した形だ。
韓国メディアは、この発言の念頭に世界平和統一家庭連合（旧統一教会）があるとの見方でほぼ一致している。尹錫悦前政権との癒着疑惑が報じられており、特定の宗教団体が人事や政策決定に影響したのではないかという不信は、有権者だけでなく信者の家族にも重くのしかかっている。
ロイター通信によれば、同団体を率いる韓鶴子総裁は、前大統領夫人に高級ブランド品を贈った贈賄容疑などで起訴され、1日にソウルで裁判が始まった。教団側は否認しているが、信者から集めた献金が政権中枢へのロビー活動に流れた疑いは、信仰の場が政治資金の入口にもなり得るという現実を突き付けている。この裁判は前政権をめぐる一連の捜査の一部でもあり、宗教と権力の結び付きの解明が焦点だ。
日本の解散命令が示した一つの基準
日本では、東京地裁が今年、旧統一教会の日本法人に対し解散命令を出した。AP通信によると、長年にわたる過度の献金要求や霊感商法で信者らに多額の損害と心理的被害を与えたと認定し、膨大な証言や資料をもとに宗教法人格の剥奪と資産の解散処理を命じている。宗教団体の枠組みを外すことで、被害回復の財源を確保する狙いもある。
背景には、安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、教団と日本の政界とのつながりが改めて問題視されたことがある。被害者や支援弁護士らが長年訴えてきた実態がようやく可視化され、世論の後押しを受けて政府が踏み込んだ格好だが、信教の自由との線引きをどう考えるかは今も社会の大きな論点だ。解散命令は信仰そのものを禁じるものではないものの、国家が宗教団体に科し得る最も重い民事制裁として受け止められている。
韓国には日本と同じ民法上の解散制度はなく、宗教団体の規制枠組みも異なる。李大統領が日本の例を挙げたのは、あくまで一つの基準を示したにすぎず、そのまま輸入できるものではない。韓国の法学者の間では、宗教の自由を守りつつ被害救済と政治介入の防止をどう両立させるか、慎重な議論が必要だとの声も出ている。
韓国社会が選ぶべき教会と国家の距離
李氏は6月に進歩系の共に民主党から大統領に就任し、前政権の非常戒厳や不正疑惑の真相解明を掲げてきた。一方で、自身も就任前から複数の裁判を抱え、大統領在任中は訴追されないとする憲法規定を根拠に、公判が延期されている事件もある。強い大統領権限のもとで、特定宗教団体の存続を左右する判断が政治的に利用されないかという懸念も根強い。
韓国社会が取り得る選択肢は、直ちに解散命令に相当する新制度を設けることだけではない。献金や選挙支援の透明化、被害者への賠償基金づくり、政治家と宗教団体の関係の全面開示など、より広いルールづくりも考えられる。日本でも、解散命令だけでなく相談窓口や訴訟支援の拡充が並行して進められてきたことは、制度設計を検討する上での一つの材料となる。
今回の指示は、一つの教団をどう扱うかだけでなく、今後の韓国で宗教と国家がどれだけ距離をとるべきかという長期的な設計図を問いかけている。信仰を持つ人々、過去の被害に苦しむ人々、政治に不信を抱く有権者のそれぞれにとって、公平で透明なルールが示されるかどうかが試されている段階にある。
