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役所の会議室で差し出された作業日報に、道の担当者が静かに疑問を投げた。釧路湿原周辺のメガソーラー計画で、事業者が示した着工日が大雪の日と重なっていたからだ。提出の遅れに加え、記録の内容にも誤りが見つかった。国会では規制の総点検が示され、現場では是正と対話が続く。工程表の1行が、計画全体の足元を映し出している。
着工日の食い違いが示したほころび
事業者が盛土規制法に基づく手続きの起点として提出したのは、2025年3月17日を着工日とする作業日報だった。8:00〜17:00の間に3人で「土木シートひき」を実施したと記されていたが、この日は急速に発達した低気圧の影響で釧路市内が大雪と暴風に見舞われた。ホワイトアウトの報告も上がる中で、屋外での敷設作業は現実的だったのかという疑問が膨らんだ。
道が確認すると、事業者は「シートをひいた」のではなく「シートを切っていた」と説明を修正した。さらに「それは着工とは言えない」と指摘を受け、木の伐採に着手した3月21日こそが着工日だと新たに述べた。起点が揺れれば、必要な届け出や安全管理の時系列も揺らぐ。工程管理の芯となる日付がぶれることの重さが、にわかに可視化された。
一連の経緯には、事後的な手当ての跡がにじむ。現場調査で未届けが判明したのは夏の終わりで、その後に提出された記録が先の悪天候の1日を起点としていた。再度の説明で伐採開始日を基準に据え直したものの、修正の届け出自体はまだ提出されていないとされる。小さな訂正に見えて、信頼の縫い目を緩めるには十分だった。
重なる法令違反と行政の是正要求
この計画では、森林法違反に加えて土壌汚染対策法の手続き遅れも明らかになっている。同法は0.3ヘクタール以上の掘削や盛土を行う場合、着手30日前の届け出を求める。ところが届け出は期限を大きく過ぎて受理された。起点の定義が曖昧なまま工事が動き始め、結果として「未届け状態の作業」が積み重なった。
道は違法伐採が確認された箇所での植樹や、土壌の再調査を求めている。10月下旬には、調査が終わるまで土地の形質変更を伴う工事を行わないよう指導した。法的拘束力はないが、事業者は従う姿勢を示したという。11月4日には釧路市内でヒアリングが行われ、調査の方法やスケジュールが確認された。行政の是正と、事業者の再開意向が、緊張をはらみながら並走している。
国政にも波紋は及ぶ。2025年11月7日の衆議院予算委員会で、高市総理は安全・景観・自然環境に関わる規制の総点検を行い、不適切なメガソーラーを法的に規制する考えを示した。個別案件の瑕疵にとどまらず、制度の目詰まりを見直す方針だ。現場で積み重なる指摘と中央での政策の動きが、同じベクトルを向くかどうかが試されている。
地域の不安と事業者の再開方針
希少生物の生息地に近いという地理的条件は、地域のまなざしを厳しくする。釧路市議からは「無理がある」という声が上がり、工事の中止を求める動きも続く。一方で、事業者は「誤解を解き、現行法の枠組みの中で最適な着地点を探る」として、手続きの是正と調査の実施を前提に早期再開を目指す姿勢を崩していない。溝は浅くなく、合意形成には時間が要る。
湿原は観光と暮らし、災害安全保障の結節点でもある。盛土や伐採が水の流れを変えれば、豪雨時のリスクや景観への影響は避けられない。再生可能エネルギーの導入と環境保全の両立は地域の願いだが、その順序と方法を誤れば支持は離れる。工程の透明性、調査の質、そして地域への説明の積み重ねが、受容の条件になる。
11月8日12:03に報じられた新事実は、手続きの甘さをあらためて突きつけた。届け出の遅れ、記録の誤記、定義の揺らぎ。それぞれは修正可能でも、積み上がれば信用の損耗に直結する。会議室を出た担当者の足取りは重かったはずだ。雪に閉ざされた日に書かれた一行が、再開への道のりの長さを静かに物語っている。
