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朝のスタジオにざわめきが残る。2025年10月21日、情報番組に現れた玉川徹氏は、前夜に自民党と日本維新の会が交わした「連立政権合意書」を手がかりに、政治の重心がどこへ動くのかを語った。公明党の離脱で長年の枠組みは途切れ、合意文書には憲法改正や家族制度を含む強い政策シグナルが並ぶ。番組の議論は、右傾化への懸念と政策の実行力という二つの像を浮かび上がらせた。
合意文書が映した「右寄り」の輪郭
2025年10月20日、自民と維新は連立樹立に合意し、合意書に署名した。文書はまず物価対応を掲げ、臨時国会でガソリン暫定税率の廃止や補正予算の成立を目指すと明記する。一方で目を引くのは、政策章立てに「皇室・憲法改正・家族制度等」「外交安全保障」などが置かれ、スパイ防止関連法制の検討と速やかな成立を図るとした点である。番組でも、経済対策の即効性と、統治や価値観に関わる改編の同時進行が話題に上った。
玉川氏はスタジオで、合意文書の配列や語彙から、従来の与党協議では前面に出にくかったテーマが一気に表舞台へ押し出されたと指摘した。現時点で確認されている範囲では、憲法改正の具体化や家族制度の位置付けに焦点が当たり、国家観を共有するという前文のトーンが全体を牽引していると映る。政策の優先順位が変われば、国会審議の時間配分も変わる。議題の選び方そのものが、政治の風景を塗り替えるという見立てが共有された。
公明の離脱と「ブレーキ」の不在
10月10日、公明党は連立からの離脱を表明した。自民と公明がともに歩んだ26年の枠組みは幕を下ろし、政権運営の重心は再配列を迫られている。番組では、公明が掲げてきた「平和の党」という自認が、これまで自民の右への舵に一定のブレーキをかけてきたとする評価が示された。ブレーキ役が外れ、維新が新たな加速装置になる――そんな比喩が交わされ、与党内のハト派の存在感が相対的に薄まるのではないかという懸念が浮かんだ。
他方で、政権の基盤を維持するには法案成立のための交渉力が問われる。閣外協力の形で始まる維新との連立は、衆参での多数形成に工夫を要する可能性が高い。だからこそ、合意文書に書かれた強い政策テーマをどの順番で、どの程度の現実性を伴って進めるのかが試金石になる。番組のやり取りは、政治マネジメントの難度と、政策の思想性の強さが同時に高まる局面を示していたといえる。
防衛装備移転や家族制度、議論はどこへ向かうか
外交・安保では、防衛装備移転三原則の運用が再び俎上に載る可能性が語られた。現行の運用は「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の五類型を軸に緩和が進んできた経緯があり、番組では五類型の見直しまで踏み込む議論に言及があった。一部報道によれば、党内の防衛族からも慎重論がくすぶるという。安全保障の現実と輸出管理の規範、その接点の引き直しは、内外の信頼にも直結する。舵の切り方を誤れば、政治的コストは小さくない。
家族制度や外国人政策も、社会の分断線に触れる。選択的夫婦別姓や戸籍・国籍に関わる設計は、暮らしの現場に直に響くからだ。玉川氏は、ナショナリズムの色合いが文書全体に濃くにじむと問題提起したが、制度をどう具体化するかはこれからの国会と与野党協議に委ねられる。現時点で確認されている範囲では、政権は物価・減税と制度改革の二正面作戦を描く。生活者の安心と権利の均衡点を、熟議の場でどこに置くのかが問われている。
