川崎重工が秋田県能代市のJAXAでLH2タンク充填試験、断熱と気密を確認

川崎重工、水素航空機タンクの充填試験に成功 国内初の性能確認へ前進

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JAXAの能代ロケット実験場で、川崎重工業が水素航空機向けの液化水素燃料タンクへの充填試験を実施し、充填から貯蔵までの一連の工程で狙いどおりの性能を確認した。同社は国内初の到達点と説明し、真空二重殻の軽量構造が高い断熱を発揮し、極低温下の気密も維持できたという。水素を「飛ぶエネルギー」として扱ううえで、実機相当のタンク技術の確からしさを示す一歩である。

充填試験が示したもの

今回の試験は、水素航空機の実装に向けたタンク要素の検証である。航空機に積むタンクは、機体重量や重心配置に影響するため、軽さと安全を同時に満たさなければならない。真空二重殻は、内殻と外殻の間を真空にして熱の伝わりを抑える魔法瓶型の構造だ。川崎重工は軽量化と断熱の両立を狙い、この方式で極低温でも圧力や外力に耐える設計の妥当性を見ている。充填と静置を通じて、熱侵入の抑制や蒸発量の管理が所期の範囲に収まるかが焦点だった。

液化水素は約-253℃という極低温で扱うため、わずかな熱でも気化が進む。タンクの外側に霜がつくような状態は内部の熱負荷の表れで、断熱の良否が運用コストや安全率を左右する。今回、真空二重殻が期待どおりの断熱性能を示したことは、熱設計やボイルオフ(気化による損失)の見通しに直結する。気密維持の確認は、長時間の貯蔵や飛行中の姿勢変化にも耐えるシール技術の裏づけになる。

試験はJAXAの能代ロケット実験場で行われた。同施設は液体水素を安全に取り扱う設備と運用実績を持ち、企業の利用も増えている。ロケット分野で培われた低温流体の知見は、航空用途のタンク開発にとっても相性が良い。研究機関の基盤を活用することで、民間の開発は評価の速度と再現性を確保できる。場所の選び方自体が、このテーマの現実性を物語っている。

なぜ液化水素タンクが難しいのか

液化水素(LH2)は体積エネルギー密度が低く、圧縮ガスよりも液化で高密度化して輸送・貯蔵するのが一般的だ。一方で、極低温ゆえに熱侵入で気化が進むため、断熱の巧拙が性能を決める。真空二重殻は伝導と対流を抑え、さらに輻射を減らす工夫を重ねる。航空機向けでは、これを軽量に作り、振動や離着陸荷重に耐え、点検性や耐火性、被雷時の安全も満たす必要がある。ひとつの要素が他を損なわない設計統合が要だ。

航空機では重量の1 kgが燃費や航続に直結する。タンクは単に冷たい容器ではなく、機体構造の一部として強度部材になる場面もある。配管やバルブ、センサーを含めた燃料供給系が振動や温度変化で歪まないようにレイアウトし、保守の現場で扱えるようにすることも欠かせない。今回の充填〜貯蔵の実証は、こうした実運用の視点からも、熱・機械・運用を束ねる設計の方向性を映し出す。

この開発は、NEDOが運用するグリーンイノベーション基金の「次世代航空機の開発」に位置づけられる。研究項目には、エンジン燃焼器・システム、水素燃料貯蔵タンク、機体構造の検討が含まれ、2030年度までの枠組みで段階的に成熟度(TRL)を高めていく。官民の枠組みの中で、個別要素の積み上げと機体全体の成立性を同時に詰めていく流れが確認できる。

プロジェクトの位置づけと次の焦点

NEDOの公募資料では、水素航空機の成立に必要なコア技術を要素ごとに定め、段階評価で継続可否を判断するステージゲートの考え方を示している。今回の充填試験は、その「液化水素燃料貯蔵タンク開発」に対応する里程標のひとつだ。タンクの断熱と気密の確認は、次の燃料供給や機体統合の実証へと接続する。基盤を国の枠組みで支え、企業が実装設計で踏み込む役割分担が見える。

ここから先の焦点は、充填サイクルの所要時間や、駐機中のボイルオフ管理、飛行時の姿勢変化や減圧への追従など、運航に直結する項目だ。空港の地上設備とセットで設計しなければ運用は回らない。振動・衝撃への強度、異常時の隔離・排気の手順、点検周期の妥当性など、認証を見据えた整備体系も問われる。タンク単体の良否から、機体・整備・地上運用が噛み合う絵にどれだけ落とせるかが鍵になる。

川崎重工は水素の「つくる・はこぶ・つかう」を一貫で磨いてきた経緯がある。社内の説明では、小型航空エンジンで水素100%燃料の運転試験にも取り組んできたとされ、タンクから供給、燃焼までの要素が線でつながり始めている。今回の充填実証は、その線に確かな節を打つ動きだ。静かながら、量産や国際連携へ向けた準備の足音が近づく。

実証は目立たない作業の積み重ねだが、機体に載せて飛ばす日常へと景色を変える力を持つ。

参考・出典

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