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岩崎電気が、交通量の少ないトンネル向けに開発した「僅少交通量トンネル照明制御システム」を用い、車両や歩行者がいない時間帯に照明を自動で暗くする運用を行った結果、導入前と比べて消費電力を83%抑えた。2025年度から自治体トンネルでの本格展開を始めており、特に小規模で利用の少ないトンネルを抱える自治体に対し、脱炭素と電気料金の両面で負担を軽くする手段としてアピールを強めている。
静かなトンネルの光を抑えるしくみ
岩崎電気のシステムは、トンネル坑口付近に設置したカメラの映像を画像処理で解析し、車や人の接近を検知すると入口部と内部の照明を自動で引き上げる。一方で誰も通らない時間帯は基本照明を大きく絞り込み、片側の器具を休ませることでエネルギー使用量と機器への負荷の両方を抑える構成だ。通行状況に応じて明るさを変えることで、従来の常時点灯型とは異なる運用を可能にしている。
従来のトンネル照明は、安全性を優先して常にほぼ一定の明るさで点灯し続けるため、夜間や早朝に通行がほとんどない区間でも電力を消費してきた。新システムでは通行時に必要な路面の明るさを維持しつつ、未通行時のみ減光することで、試験トンネルで従来比83%という大幅な削減効果を確認したとされる。会社側は、電力量がおおよそ5分の1以下まで下がる水準だと説明しており、省エネの度合いを強調する。
また、霧や豪雨などで視界が悪くなった場合や、トンネル内に歩行者が長くとどまっている場合には、その状況を画像から検知し、照明を定格に近い状態まで戻すフェイルセーフも備える。省エネを追求しながらも、異常時に暗すぎる状態が続かないよう安全側に倒す制御ロジックを採用しており、減光と安全確保のバランスをどう取るかという課題に一定の答えを示した形だ。
小規模トンネルで問われる省エネと安全
岩崎電気が主な用途として想定するのは、山間部や地方部に多い、交通量が少なく車の流れが途切れがちなトンネルである。こうした施設では、ナトリウムランプからLED照明への更新だけでも大きな削減効果が見込めるが、その後も長時間誰も通らない時間帯が残るため、さらなる省エネ余地があると同社はみている。減光制御を組み合わせることで、既存のLED更新だけでは取り切れなかった無駄な点灯時間を削る狙いだ。
国土交通省は、道路やトンネル向けのLED照明導入ガイドラインを整備し、光の質と安全性を確保しながら効率化を進める方針を示してきた。一方で、地方自治体には老朽設備の更新費用や電気料金の負担が重くのしかかる現実がある。今回の制御システムは既存のLED器具と組み合わせて使うことを前提としており、トンネル設備そのものを大規模に作り替えずに、追加の電力削減を狙える点を訴求している。
日本全体では2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標が掲げられ、道路照明などインフラの省エネ化は避けて通れないテーマになった。交通量の少ないトンネルをどう運用するかは自治体ごとに事情が異なるが、岩崎電気の試みは、明るさと安全を維持しながらどこまで電力を削れるのかという新たな選択肢を示している。今後は実際の導入事例を通じて、費用対効果や運用のしやすさがどこまで証明されるかが問われるだろう。
