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薄曇りのパリ、マチニョンの中庭に集まった記者の前で、政権の行方を測る言葉が重ねられた。マクロン大統領は8日、10日夕までに新首相を指名すると明らかにし、解散・総選挙という最悪手を当面棚上げした格好だ。退任するルコルニュ首相は各会派との協議が進んだと語り、年末までの予算成立に向け「道筋」を示した。先の見えない混乱に、ようやく一本の細い糸が垂らされたと映る。
マチニョンの中庭で見えた「細い道」
8日、ルコルニュ氏は仏下院各勢力や上下両院の要職者と面談を重ねた結果として、「12月31日までに予算を持つ」という共有された意思があると述べた。連立の組み方に決め手を欠く中でも、予算という最低限の合意点を先に固める現実的なアプローチである。与党の核であるルネサンスに加え、中道右派から中道左派まで幅広い回路を探る作業が続いているとみられる。解散は避けたい、しかし白紙委任もためらう——その議場の空気が浮かぶ。
ただし、合意は脆い。極右と急進左派は不信任を辞さない構えを崩していない。多数派形成が不発に終われば、解散か別人事かという二者択一が再び立ち上がる。誰に有利なのか、偶然か必然か。政治の駆け引きは、予算編成という期限が迫るほどにゼロサムへ傾きやすい。ルコルニュ氏が示した「予算先行」の道は細いが、現時点で最も現実的な橋である。
48時間の猶予と解散回避の計算
大統領府は、大統領が48時間以内に新首相を指名する意向を確認した。6日に受理されたルコルニュ内閣の総辞職から数日、協議の結果を踏まえての判断である。新首相が議会運営の糸口をつかめば、昨年末以降の短命政権の連鎖に歯止めがかかる可能性がある。逆に組閣に失敗すれば、解散総選挙のリスクは一気に現実味を帯びる。大統領任期の残りと2027年大統領選をにらみつつ、解散カードの効用と副作用を天秤にかける局面が続くとみられる。
ルコルニュ氏は新首相像について「次期大統領選の野心を持たない人物が望ましい」との考えを示してきた。政権運営の即地性を優先し、将来の選挙戦から距離を置く技術内閣的な色合いを帯びる可能性があるからだ。他方で、急進両翼は体制への不信を強め、中道各党は条件闘争に走る。48時間という短い時限の中で、政治的コストの最小化と必要最小限の合意形成をどう両立させるかが勝負どころになる。
支持率14%という現実、政策修正の余地
足元の政治混乱は大統領の支持にも直撃している。7〜8日に実施された世論調査では、マクロン氏への信頼は14%に低下し、就任以降で最低水準に並んだ。危機対応や議会運営の不透明感が積み重なり、自陣営の支持層でさえ離反が目立つ。政策面では、2023年に施行された年金制度改革がなお分断の焦点であり、予算協議のテーブルでも火種であり続ける。新政権が多数派工作と並行して、どこまで政策の優先順位を組み替えられるかが安定回復の鍵を握る。
市場は一時的に安堵を示す場面もあるが、根底の不確実性は払拭されていない。予算編成で財政規律へのコミットメントを打ち出せるか、年金など構造課題に対する着地点を示せるか——その答えが示されるまで、投資家も有権者も様子見を続けるだろう。新首相の人選は、単なる顔触れ以上に、政策の優先順位と交渉の作法を占うリトマス紙になる。