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薄闇の街に、細い砂ぼこりがふわりと舞った。人影が外に飛び出し、通りの片隅では毛布を肩にかけた家族が身を寄せ合う。アフガニスタン北部で2025年11月3日未明、M6.3の地震が発生した。現地当局は死者が少なくとも7人、負傷者が約150人と伝えており、揺れは主要都市マザリシャリフ周辺に広がった。救助と情報の集約が続く中、被害の全貌はなお見通せない状況だ。
夜明け前の揺れ、北部を直撃
強い揺れが訪れたのは2025年11月3日 05:29ごろ。米地質調査所（USGS）によれば震源はバルフ州のコルム西南西約22 km付近で、深さは28 kmとされる。人口が集中するマザリシャリフ近郊を震源とする地震は、北部から中部にかけて広い範囲で感じられ、人々は寝具や身の回りの品を手に通りへと避難した。夜気の冷たさが漂う中、電灯の瞬きと祈りの声が交差した光景が浮かぶ。
USGSの自動評価システム「PAGER」は、この地震に対しオレンジ警報を発出した。多くの死傷者が出る可能性と、災害が広範囲に及ぶ恐れを示すシグナルである。山岳地帯に集落が点在し、日干しれんが造りの住居が少なくない地域特性を踏まえると、建物被害が生活基盤に直結するリスクは高いと映る。揺れの規模と地盤条件が重なり、被害の分布は複雑になりやすい。
被害の初報と揺れる数字
現時点で確認されている範囲では、サマンガン州の保健当局が3日朝までに死者7人、負傷者150人の報告があると伝え、負傷者は医療センターへ搬送されたという。一方で、国家災害管理当局は死傷者や被害の詳細を後ほど公表するとしており、統一された数字はまだ示されていない。情報の更新速度とアクセスの制約が数字の幅となって現れている。
報道のトーンにも差が出ている。ロイターは地元保健当局の集計として「死者7人、負傷者150人」と伝えたが、APは当局の別の発表に基づき「死者少なくとも5人、負傷者143人」と報じた。AとBで数字が揺れるのは被災直後の常であり、各医療機関の受け入れ状況や集計のタイミングが影響しているとみられる。今後、国家機関による取りまとめが鍵になる。
壊れた祈りの場と人々の日常
バルフ州の報道官は、マザリシャリフにあるモスクの一部が損壊したと述べた。礼拝の場は地域社会の心の拠り所でもあり、建物の傷は日常の断裂として受け止められる。金属製の扉が歪み、壁の装飾が剥がれ落ちたという現地の描写も伝わる。文化的記憶の器が損なわれるとき、被害は単なる物理的な破壊を超え、人々の時間の流れそのものに影を落とす。
SNSには、がれきの下から人々を引き出す救助の動画が相次いで投稿された。ただし映像の信ぴょう性や撮影地点は現時点で確認されていない。幹線道路から離れた谷筋の集落はアクセスが難しく、被害把握が遅れる傾向がある。日没と夜明けの間に動いた救助隊が、薄明の中で手探りの活動を続ける姿がにじむ。
警報評価が示すものと、これから
オレンジ警報は、致命的被害の可能性が無視できない状況を指す。USGSの推計はあくまで自動評価だが、土壁・れんが造の家屋が多い北部では、揺れの方向と建物の弱点が一致した場合に倒壊リスクが高まる。過去の地震でも、壁体と屋根の結合部が脆弱な家屋で被害が集中した事例がある。構造の弱さに社会的な脆弱性が重なる現実が、今回も透けて見える。
8月末には東部でM6.0の地震が発生し、大きな犠牲が出たばかりだ。人々は仮設の暮らしを続け、医療・水・住居の不足が慢性化する中で新たな揺れに直面した。冬の入り口にある高地での被災は体力と心理に長い影を落とす。今回の震源は北部で性格が異なるとはいえ、再建の速度と耐震的な復旧が追いつくのかが問われている。
