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茶畑の斜面が裂け、濁流が家々をのみ込んだ。ネパール東部とインド東北部で激しい雨が続き、土砂崩れと冠水が相次いだ。当局発表によれば、ネパールでは2025年10月5日までに少なくとも44人が死亡し、行方不明も出ている。国境を挟む西ベンガル州ダージリンでも死者が確認され、救助は難航している。モンスーン終盤の豪雨が生活を直撃した格好だ。
茶畑の山あいで広がった土の奔流
最大の被害はイラム郡だ。山の尾根を刻む茶畑の町で、複数の集落が土砂にのみ込まれた。ネパール国家災害リスク軽減管理局の集計では、同郡で少なくとも37人が死亡したとされる。豪雨は3日から続き、落石と崩落で道路が寸断され、救助隊の進入が繰り返し止められたと伝わる。
国内の死者は5日までに少なくとも44人、行方不明5人という把握が示された一方、その後の更新で47人となったとの報もある。避難や捜索は雨脚に左右され、夜間は危険が増す。家屋を直撃した地滑りや、斜面の崩落に巻き込まれた住民の救出が続くが、土砂の二次崩壊が恐れられている。
政府はヘリコプターの投入や地上部隊の派遣で医療搬送と避難誘導を急いだ。主要幹線は危険区間の通行を止め、国内線の運航は4日に大幅に抑制された。最大の祭礼からの帰路と重なり、各地で車列が膨らんだ。気象当局は東部から中部にかけての大雨警報を継続し、住民に河岸へ近づかないよう呼びかけている。
カトマンズの川が見せた危うさ
首都カトマンズでも川が膨れ、河岸の住宅地や道路が広く浸水した。バグマティ川沿いの低地では床上まで水が迫り、住民は家財を高所へ運び上げた。市内と地方を結ぶ道路は各所で泥流と崩落に阻まれ、一時的に陸路で孤立する状況も生まれた。
東南部ではコシ川の水位が危険域を上回り、堰の全56門が開放された。橋の通行は禁止され、周辺の集落では越水に備えた撤収が続いた。広域の雨雲が抜け切らない見通しが5日まで示され、自治体は土砂災害の前兆があれば直ちに高台へ移るよう繰り返し周知している。
水が引いたと見えた後に再び増水するケースも報告され、住民の疲労がにじむ。濁流の流速は普段より速く、わずかな判断の遅れが命取りになる。流木と土砂が橋脚に絡み、橋が通れなくなる例が相次ぐ。小さな判断が地域全体の安全を左右する場面が広がっている。
国境の向こうの山でも
国境の向こう、インド側の西ベンガル州ダージリンでも鉄砲水と地滑りが発生した。山肌を縫う道路が崩れ、観光地として知られる丘陵地の集落で家屋被害が出ている。地元警察は5日、少なくとも7人の死亡を確認し、行方不明者の捜索を続けていると説明した。数は今後も増える可能性があるとみられる。
斜面の土が飽和し、狭い谷筋で水が一気に流れ落ちる。救助は雨脚と落石の合間を縫って進むしかなく、到達が遅れる集落が残る。地元メディアの続報では死者の増加が示唆され、被害の全容はなお流動的だ。誰にとって何が最も急がれるのか、現場は難しい選択を迫られている。
インドの首相はネパールへの支援を申し出た。国境をまたぐ河川が多い地域では、一方の治水が他方の安全に直結する。情報の共有と早期避難の徹底が鍵となるが、観光や農業の稼働との折り合いも避けて通れない。偶然の豪雨か、必然のリスクかという問いが重くのしかぶ。
