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ネタニヤフ首相は2025年11月10日、トランプ米大統領の娘婿クシュナー氏と会談し、ガザを巡る和平計画の後段について協議した。イスラエル政府は、武装解除や統治の再設計を議題に挙げたと説明。焦点は、停戦後の治安管理を誰が担い、地上の復旧と並走させるかという実務である。計画の実行力を測る初めの峠に、交渉は差し掛かった。
計画後段が示す着地点
会談で示された枠組みは、イスラム組織ハマスの武装解除、ガザの非軍事化、統治への再関与を許さない仕組みづくりに及ぶ。非軍事化とは、重火器の撤去や軍事訓練の抑止を制度で縛ることを指す。これに合わせ、国際安定化部隊（停戦後に治安維持と復旧調整を担う多国籍要員）の設置が検討されている。
要は、治安・行政・復興の三つを同時に動かす設計である。治安の空白を埋める暫定の警備体制、支出の透明性を担保する資金管理、学校や病院といった基本インフラの再開を、段階ごとに結び直す必要がある。外形の合意だけでなく、誰が命令系統を握るかという細部の調整が重くなる。
同時に、統治の空白を埋める暫定行政の設計も避けて通れない。地方の公務員や公益事業の担い手を誰が保全し、給与や物資の流れをどう守るか。非軍事化の措置が市民生活の停滞を招かないよう、移行期の例外規定を設ける発想も必要だ。
ラファの地下と「安全な離脱」
会談の中心には、最南部ラファのイスラエル軍支配地域で地下トンネルに閉じ込められているとされる戦闘員約200人の扱いが置かれたという。ハマスは安全な離脱を求める一方、イスラエル側は受け入れに慎重だと複数の外交筋は語る。ハマス側は協議継続を望むが、降伏の選択は拒む姿勢を崩していない。
安全な離脱は、武装解除と移動の交換条件をどう設計するかに直結する。一時拘束や監視下での移送など、段階的な措置が考えられるが、現場の安全と抑止の均衡は揺れやすい。米国の中東担当特使は近時、個々の難題を具体化できるかが計画全体の評価軸になると示しており、この論点は試金石として映る。
この論点には前例が乏しい。戦闘員の移動経路、識別方法、監視の継続、違反時の復帰措置まで、合意文の一語が現場の危険度を左右する。停戦線の維持、避難民の往来、復旧チームの安全確保とも連動し、ひとつの誤算が連鎖を生みやすい局面である。
ワシントンとの同調と現場の歩調
イスラエル政府の報道官は、ガザにおける治安部隊の決定は米政権と協調して下されていると説明している。現場判断の速度と、外交交渉の節目がずれると、停戦後の管理は脆くなる。部隊の権限設計や法的地位、監督機関の構成まで詰めることが、安定化の実効性を支える。
年初には、首相が米特使とエルサレムで面会し、人質交渉と停戦枠組みの調整が進んだ経緯がある。現在はクシュナー氏が加わり、政治判断と実務の接点が再編されつつある。特使の任務は軍事作戦の指揮ではなく、当事者間の合意形成を運ぶことにある。関係各国の役割分担が、部隊創設の速度を左右する。
国際安定化部隊の投入は、国連決議の扱い、地域の合意、資金分担の三点で調整が要る。現地の警察機能や国境管理と二重化すれば摩擦を生み、逆に権限が弱すぎれば無力化する。歩調を合わせる作業は、政治の意思と現場の規律の双方を試す。
輪郭は描き始められたが、地図はまだ書き足されている。静かな動きが、次の展開を待っている。
