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ネタニヤフ首相は2025年11月16日、イスラエルはパレスチナ国家樹立に反対するという従来方針を改めて示した。米国が国連安保理に提出したガザ情勢の新提案が「国家への道筋」に触れたことを受け、連立内の極右勢力が反発と離脱警告を強めていた。首相は同時に、ガザの非武装化とハマスの武装解除を「容易な方法でも困難な方法でも」達成すると述べ、戦後秩序をめぐる条件闘争の火種が再び浮かび上がった。
連立の綱引きが強まる
15日、極右のイタマル・ベングビール国家治安相とベザレル・スモトリッチ財務相が、米国の文言が示唆する「国家像」を公然と批判するよう首相に要求した。ベングビール氏は応じなければ連立離脱も辞さない姿勢を示し、脆弱な連立の重心が軋む音が聞こえた。翌16日、ネタニヤフ氏は声明で「わが国の立場は変わっていない」と明言し、国内の圧力と国外の圧力の両方に抗して方針を堅持する構えを見せた。
首相はガザの非武装化とハマスの武装解除を不可欠の条件として掲げた。発言は、武力と外交を交差させながら戦後の秩序を組み立てるという現在の基本路線を重ねて示す形である。他方で、与党右派の一角が離脱すれば政権の早期崩壊も現実味を帯びる。定められた選挙時期を前に、内政の計算と対外メッセージがせめぎ合う。声明は国内の求心力を確かめる試金石になりつつある。
米国案が投げかけた波紋
米国は今月、国連安保理にガザの停戦と安定化を目指す決議案を提示した。草案は「ボード・オブ・ピース」と呼ぶ国際的な移行機構の設置や、治安の枠組み、復興資金の流れを定める構想を含むとされる。交渉の過程で、パレスチナの自決権（人々が自らの政治的地位を決める権利）や国家への道筋に触れる表現が加わり、イスラム教徒が多数を占める国々の一部や米国が支持に回ったことが、エルサレムの政治地図に波紋を広げた。
米政権が支える枠組みの背景には、トランプ大統領の20項目からなる和平計画がある。同計画はパレスチナ自治政府の改革が進めば「最終的に自決と国家樹立への信頼できる道筋が整う可能性」を言及していると報じられてきた。欧米の一部では国家承認へ踏み出す動きも強まり、国際社会の視線は「停戦後を誰がどう管理するか」から「政治的地平をどこまで描くか」へと広がっている。イスラエル与党の反発は、まさにこの文言の重みを映している。
ガザ後をめぐる条件闘争
ネタニヤフ氏は16日の声明で、ガザの非武装化とハマスの武装解除が前提であることを繰り返した。表現ににじむのは、戦闘の強度を下げても安全保障上の主導権は手放さないという考えだ。国内では一部閣僚が国家構想そのものを拒むのに対し、国外では人道支援と復興の加速に政治的見通しを結びつける機運がある。両者の間で、停戦の持続条件と統治の設計図をどう接続するかが焦点になっている。
安保理は米国案の採決を見据え、文言調整を続ける。首相の「立場は変わらない」という一言は、合意形成の地平を狭めるようにも、交渉の境界線を明確にするようにも読める。国内の離合集散と国際交渉が同時進行するなか、連立の結束と外交の柔軟性をどう両立させるか。硬い文言の裏側で、戦後秩序をめぐる静かな駆け引きが続いている。
