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受信料を払っている人と払っていない人、その差をどう埋めるのか。NHKが受信料の支払率低下に直面し、2025年10月に「受信料特別対策センター」を立ち上げた。未払いが続く世帯などに裁判所を通じた「支払い督促」を本格的に使い、2025年度には手続き件数を前年度の10倍超に増やす方針だ。公共放送の負担の在り方を改めて問い直す動きになりそうだ。
NHKが新センター設置、未払い1年以上への対応を強化
2025年11月17日に明らかになったのは、受信料の支払いが1年以上途絶えている世帯や事業所に対し、NHKがこれまでより踏み込んだ対応を始めるという方針だ。NHKは近年、受信料の支払率が下がり続けており、徴収の現場では「払っている人との不公平感が広がっている」との声も聞かれるようになっていた。
こうした状況を受けて、NHKは10月、社内に「受信料特別対策センター」を新設した。センターは、未払いが長期化している契約者のデータを精査し、電話や書面での督促に加えて、必要に応じて裁判所への申立てまでを一括して担う組織と位置づけられている。従来よりも法的手続きに重心を置いた運用に変える狙いがある。
支払い督促を本格活用し、25年度は件数10倍超へ
NHKが今回活用を強める「支払い督促」は、簡易裁判所に書面で申し立て、相手方に支払いを命じるよう求める制度だ。相手が異議を出さずに一定期間が過ぎると、その決定は判決とほぼ同じ効力を持ち、給料や預金などの財産を差し押さえる強制執行につながる可能性がある。訴訟より手続きが簡単で、費用も抑えられるのが特徴とされる。
NHK関係者によると、支払い督促の対象は受信契約を結んでいながら、1年以上受信料を滞納している世帯や事業所に限る。2024年度にこの手続きに踏み切ったのは約120件だったが、2025年度はその10倍超に増やす見通しで、2026年度にはさらに拡大させる方針だという。これまで様子見だった未払い事案にも、本格的にメスが入ることになる。
受信料収入の減少と公共放送の持続性への懸念
背景には、受信料収入の先行きへの不安がある。NHKは2023年10月に受信料をおおむね1割値下げし、家計負担の軽減を図ったが、その後は2年連続の赤字決算となっているとされる。またコロナ禍以降、戸別訪問による営業活動を抑えてきたこともあり、新規契約の伸び悩みや支払率の低下が続いてきた。今回の法的強化は、こうした収支の厳しさを映す措置とも受け止められる。
一方で、インターネット配信の拡大などで視聴スタイルが大きく変わるなか、「テレビをあまり見ないのに同じ額を払うのか」という違和感も根強い。法的手続きの強化は、受信料をきちんと支払っている人にとっては不公平感の解消につながるが、経済的に厳しい世帯には重い通知として届く可能性もある。公共放送を支える費用を、社会全体でどう分かち合うのか。静かな議論が続きそうだ。
