ナイジェリアが国家緊急事態宣言　止まらない拉致と揺らぐ教育の現場

※記事を視覚化したイメージであり、実際の事象とは異なります。

2025.11.28

本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。[続きを表示]ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]

ナイジェリア北部ナイジャ州の村々で11月26日夜、武装集団による襲撃があり、少なくとも10人が拉致された。1週間で児童・生徒を中心に数百人が連れ去られた状況を受け、ボラ・ティヌブ大統領は同日、「国家緊急事態」を宣言した。止まらない拉致の中で、人々の暮らしと教育はどこまで守られるのか。

村と学校を襲う「日常化した拉致」

ナイジャ州では農村の集落や通学路が繰り返し狙われ、日が落ちると外出を控える住民が増えている。26日夜の襲撃では、銃を持った男たちが複数の村に押し入り、家々から少なくとも10人を連れ去ったと警察が明らかにした。

その直前には、同じ州のパピリ村にあるカトリック系セントメリーズ校が襲われ、300人を超える児童・生徒と教職員が拉致された。逃げ延びた子どももいるが、多数が今も森のどこかに拘束されているとみられ、州知事はさらなる被害を防ぐため多くの学校に休校を命じている。

ケッビ州での女子生徒拉致や、礼拝中の信者を狙った事件も同じ週に発生した。農村では「学校に通わせるか、安全のために家に留めるか」という選択を迫られ、教育を受ける権利そのものが武装勢力の影に脅かされている。

こうした連鎖的な拉致を受け、ティヌブ大統領は11月26日、全国規模の治安緊急事態を宣言した。AP通信などによれば、大統領は演説で「国家的な危機だ」と述べ、治安悪化が目立つ地域に兵力と警察部隊を増派すると表明した。

政府は新たに警察官2万人を採用し、一部は富裕層や政治家の身辺警護から外して紛争地帯に再配置する計画だ。情報機関の下では「フォレストガード」と呼ばれる部隊を増員し、武装集団が潜む森林の監視を強化するとしている。

しかし、装備や給与の不足、汚職問題など、治安部隊の力を削ぐ要因は長年放置されてきた。専門家の間では「人数を増やすだけでは誘拐ビジネスは止まらない」との見方もあり、住民にとって緊急事態宣言がどこまで安心につながるのかはなお不透明だ。

エジプトの英字メディア「アハラム・オンライン」が紹介した民間調査では、2024年7月からの1年間で少なくとも4,700人以上が誘拐され、犯行グループは総額数百億ナイラ規模の身代金を要求したとされる。誘拐は、高い利潤を狙えるビジネスとして組織化しつつある。

武装集団は複数州にまたがる森林に拠点を置き、バイクで村を急襲して子どもを連れ去る手口を繰り返す。2014年のチボク女子生徒拉致以降、学校を標的にした事件で1,500人超の子どもが被害に遭ったとされ、教室はもはや安全な場所とは言いがたい。

今回の国家緊急事態が、こうした誘拐ビジネスの土台にある貧困や統治不全にどこまで切り込めるかは見通せない。治安強化の費用や長期休校のしわ寄せは、まず農村の家庭が負っている。誰がどこまでこのコストを分かち合うのかという問いが、静かに突きつけられている。