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大規模な誘拐が続くナイジェリアで、先週末だけで新たに3件の襲撃・拉致が起きたと、1日までに治安当局が公表した。学校や教会、農作業中の人びとが次々と狙われ、数百人規模の被害が出た直後の出来事だ。拉致が日常を侵食するなか、人びとは子どもを学校に通わせ続けられるのかという根本的な問いに向き合わされている。
村と学校に迫る「次は自分かもしれない」という恐怖
11月下旬、ナイジェリア中部ナイジャ州のカトリック系寄宿学校「セントメリーズ」では、夜明け前に武装集団が押し入り、児童生徒303人と教師12人が連れ去られた。約50人は逃げ延びたが、多くは今も戻っていないと、海外メディア「アルジャジーラ」などは伝える。
同じ2週間のあいだに、北西部ケビ州の女子校や西部クワラ州の教会でも集団拉致が起き、一部は救出されたものの不安は消えていない。北部から首都圏にかけては村や農場、葬儀の行列までが襲撃され、王族や農民、学生ら計約490人が連れ去られたと、ナイジェリアの有力紙「パンチ」などが報じている。
相次ぐ事件を受け、ナイジャ州などでは周辺の学校が一斉に休校となり、授業再開のめどが立たない地域もある。 農作業や礼拝に出ることすら命がけとなり、家族は子どもを外に出すかどうか毎日迷う。教育の機会を諦めれば貧困が深まり、通学させれば誘拐の危険が高まるという厳しい選択を迫られている。
「非常事態」宣言でも埋まらない治安の穴
こうした状況を受け、ボラ・ティヌブ大統領は11月26日、全国規模の治安非常事態を宣言した。ロイター通信によれば、大統領は警察官2万人の追加採用や要人警護部隊の前線再配置、森林地帯への特別部隊投入などを打ち出し、拉致犯の一掃を約束したという。 しかし、広大な農村や森を抱える同国で、増員された治安部隊が隅々まで行き届くかは未知数だ。
ナイジェリアでは、ボコ・ハラムや「イスラム国西アフリカ州」などの過激派に加え、身代金目的の武装集団が各地で活動しているとされる。日本の外務省も、テロ組織のほか身代金誘拐が全国に広がっていると警告する。 身代金支払いは法律で禁じられているが、裏で現金が動き、誘拐が「ビジネス」として定着しているとの指摘も多い。
ナイジェリアのNGO「SOSチルドレンズ・ビレッジ」は、過去10年で少なくとも2500人の子どもが国内で誘拐されたとし、とりわけ親を頼れない少女が標的になりやすいと訴える。 一方、上院では地域に根ざした治安組織づくりを急ぐべきだとの声が出ており、住民自身が通学路や礼拝所を見守る仕組みも模索されている。 貧困や汚職で国家への信頼が揺らぐなか、治安強化だけで誘拐ビジネスを断ち切れるかは不透明で、子どもをどう守るのかという問いが社会全体に突きつけられている。
参考・出典
- 学校から子供ら300人超拉致 ナイジェリア西部 武装集団が襲撃
- Nigeria Security Crisis: Bandits Kidnap 490 in Two Weeks
- 2025 Niger State school kidnapping
- Nigeria's Tinubu declares security emergency, orders mass recruitment of police and army
- 海外安全ホームページ: テロ・誘拐情勢
- Nigeria blames jihadist groups for wave of kidnappings but others accuse criminal gangs
- 16 Days of Activism: 2,500 children abducted in 10 years – CSO – Vanguard News
- Over 300 students were abducted by Nigerian gunmen from Catholic school
