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米司法省は8日(現地時間)、米半導体大手NVIDIAの先端AI向けGPU「H100」「H200」を中国へ密輸しようとした疑いで、中国にルーツを持つ男2人を拘束し、輸出管理関連法違反などで訴追したと発表した。軍事転用も可能な先端半導体を巡る米中の攻防は、正式な輸出許可だけでなく、水面下の密輸ネットワークをどう封じるかという局面にも広がっている。
倉庫でラベル張り替え 巧妙化するAIチップ密輸の手口
訴追されたのは、ニューヨーク在住の中国国籍のFanyue Gong容疑者(43)と、カナダ・オンタリオ州に住む中国出身のカナダ国籍Benlin Yuan容疑者(58)だ。検察は、両容疑者がそれぞれ香港の物流会社や中国本土のAI技術企業の従業員と共謀し、米国の輸出規制をすり抜けてNVIDIA製GPUを中国や香港に送ろうとしたとみている。事件は、中国向けの密輸網を一括して摘発する「Operation Gatekeeper」と名付けられた捜査の一環で、同じ枠組みでテキサス州の企業経営者らが総額1億6000万ドル相当のGPUを不正輸出したとして既に有罪答弁している。
司法省や裁判所資料によれば、共謀者らはまず人頭会社や仲介業者を使って米国内でGPUを購入し、表向きは米企業や台湾・タイなど第三国の顧客向けと偽装していた。実際には複数の米倉庫に集めた後、NVIDIAのロゴを剥がして「SANDKYAN」という架空ブランドのラベルを貼り直し、輸出書類上も「一般的なコンピューター部品」と記載を変えて出荷手続きに回したとされる。こうした手口により、輸出許可が必要な先端GPUであることや、最終仕向け地が中国であることを隠していた疑いがある。H100やH200は、大規模言語モデルなどの生成AIや高性能計算に不可欠な一方、軍事・監視用途にも転用可能な「デュアルユース」技術と位置づけられ、米当局は安全保障上の要衝とみている。
対中規制と部分緩和のはざまで 企業と当局のせめぎ合い
米政府は2022年以降、先端AI半導体の対中輸出規制を段階的に強化し、一定性能以上のGPUについては中国向け輸出を原則禁止、あるいは厳格な許可制としてきた。今回名指しされたH100やH200もその対象であり、司法省は「中国などへの違法輸出を阻止することが国家安全保障の核心だ」と強調する。一方で、トランプ大統領は最近、条件付きでH200の中国向け輸出を認める方針を打ち出し、売上の25%を米政府が取得する枠組みを示したと各紙が伝えている。より先進的な「Blackwell」世代は引き続き禁輸とされるものの、同じタイミングで密輸網の摘発が公表されたことで、「表の規制と裏の摘発」という二重のメッセージが中国側や半導体業界に投げかけられている構図だ。
NVIDIAは声明で、政府当局や顧客と協力し、不正な転売や密輸を防ぐ姿勢を改めて示した。中国大使館も、在外中国人は所在国の法律を順守すべきだとしつつ、自国民の正当な権利保護に努めるとコメントしている。高度なAIチップを求める中国企業の需要は依然として強く、正式な輸出経路が狭まるほど、今回のような迂回取引や偽装工作に依存するインセンティブが高まるとの懸念も専門家から聞かれる。米国の規制は日本を含む同盟国の企業にも波及しており、半導体や部材を扱う商社・メーカーには、取引先や最終需要を検証するコンプライアンス体制の強化が一段と求められそうだ。今回の摘発は、先端技術をめぐる攻防が、法廷とサプライチェーンの両方で長期戦になることを象徴しているとの見方が出ている。
