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参院の事務総長室に分厚い紙束が運び込まれ、カメラのシャッターが一斉に鳴った。25日、参政党の神谷宗幣代表がスパイ防止法案と特定秘密保護法の改正案を提出し、その翌日には国民民主党も独自案を出す段取りを進めている。来年の通常国会で自民党と日本維新の会が本格的な法整備に踏み出す前に、野党側から先に「たたき台」を示し、議論の方向性を自ら描こうとする動きである。
野党発のスパイ防止構想 狙いは議論の主導権
参政党が出した法案は、外国勢力による情報収集や選挙への介入を念頭に、処罰規定の新設や強化を検討事項として掲げる内容だ。あわせて、現在の内閣情報調査室を格上げして「局」級の情報機関とし、政府の防諜活動をチェックする監察組織の創設にも踏み込んだ。神谷代表は記者団に対し、国家が恣意的にスパイ行為を認定しないよう制度の透明性を高めるべきだと繰り返し訴えた。こうした設計には、強権的な運用への警戒と、安全保障上の不安の双方に応えようとする意図がにじむ。
一方、国民民主党は7月の参院選でスパイ防止法の制定を掲げ、9月には国会内でワーキングチームを立ち上げた。今回提出されるのは個別の罰則よりも原則を示す「基本法」色の強い案で、政府のインテリジェンス活動に対する国会や国民への説明責任をどう確保するかを中心テーマとする。党内では関連6法案の検討も続いており、提出はあくまで議論を深めるための呼び水と位置づけられている。自ら詳細設計に踏み込むというより、与野党を巻き込んだ協議の土台を先に置く狙いがある。
与党の大枠と自由への懸念 過去の教訓も背に
背景には、政権側の大まかな工程表が既に描かれている事情がある。自民党と日本維新の会は10月20日の連立政権合意書で、インテリジェンス・スパイ防止関連法制の検討を2025年中に始め、基本法や外国代理人登録法、ロビー活動公開法などを一体で整備する方針を掲げた。情報機関の再編や対外情報庁の創設構想も並び、国家安全保障の枠組み全体を組み替える大規模な改革案である。ここに野党案が割り込むことで、秘密保全と市民の権利保障のバランスをどう取るかという論点が、政権の設計図に先んじて可視化されつつある。
しかし、法制化に慎重な声も根強い。2014年施行の特定秘密保護法は、防衛や外交など4分野の機密を守る目的で導入されたが、報道や市民活動への萎縮効果が懸念されてきた経緯がある。公明党の西田実仁幹事長は、同法で対応できない領域を丁寧に洗い出す必要があると述べ、拙速な議論に釘を刺した。立憲民主党の一部からは、そもそも新たなスパイ防止法が必要なのか疑問視する声も漏れる。1980年代に提出され、秘密の範囲があいまいだとして廃案になった「国家秘密法案」の記憶も、今の国会に静かな影を落としている。過去の失敗と現在の脅威、そのあいだで日本の情報法制をどこへ着地させるのかが問われている。
