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早朝の側道に、かつて漂った湯気と香辛料の匂いは薄い。大阪府大東市で中国朝市を切り盛りしてきた「華龍食品」をめぐる事件で、2025年10月20日、新たに中国籍の従業員6人が不法就労の疑いで書類送検された。10月1日の経営者逮捕から余波は広がり、地域に根づいた人気の朝市がいま改めて問われている。
朝の静けさの裏で動いた捜査
静まり返った店先に、開店を待つ人の列はない。現時点で確認されている範囲では、書類送検は2025年10月20日。対象は20代から30代の中国籍の男女6人で、いずれも「華龍食品」の従業員だったとされる。6人は在留期間を超えて滞在したり、在留資格で認められない業務に従事した疑いがもたれており、府警は雇用実態の把握を進めているとみられる。
捜査関係者によれば、6人は日曜の朝に開かれる市場で調理補助を担い、揚げパンなどを作っていたという。報酬は「1回7000円で働いていた」との供述が出ているが、支払い方法や指示系統の詳細はなお見えていない。朝のにぎわいの舞台裏で、誰がどのように人を集め、働かせていたのか。捜査は現場の実態解明に軸足を置いていると映る。
経営者逮捕から見えた構図
発端は2025年10月1日である。店の経営者の上條亜希子容疑者（59）と親族の従業員（33）が、出入国管理法違反（不法就労助長）の疑いで逮捕された。容疑は2023年3月から2025年9月上旬にかけ、不法残留などの中国人らを雇い入れ違法に働かせたというものだ。朝市は本格的な食材と料理で人気を博してきたが、その盛況の陰で、雇用と在留の線引きが揺らいでいた構図が浮かぶ。
一方で、店側の姿勢もうかがえる。警察の調べに対し上條容疑者は「店はもうやりません」と供述したという。周辺では2025年8月24日に一斉取り締まりが行われ、約1時間で違法駐車など7件を検挙。警察は指導や警告を繰り返してきたが改善がないため継続的に取り締まる考えを示しており、治安と生活環境の両立が課題として前面に出てきた。
地域の市場はどこへ向かうのか
今回、書類送検された6人は元技能実習生とされる。地域の人手不足を補ってきた層が、在留や就労資格の狭間で脆弱になりやすい現実もにじむ。現時点で確認されている範囲では、朝市の運営は法令に即した管理体制を欠いた可能性があり、雇い主側の確認義務や就労範囲の線引きが改めて問われている。市場の魅力と規律、その両立は本当に不可能なのか。
朝市は文化の交差点であり、地域経済の小さなエンジンでもあった。人気の場を持続させるには、在留資格の確認や労務の手当て、周辺交通の整理まで含めた総合的な見直しが要る。府警は捜査を続けており、関係者の供述や資金の流れが固まれば、構図の全体像が明らかになるだろう。にぎわいを取り戻す道筋は、法と共存する運営に尽きるとみられる。
