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乾いた山風のなか、国境の峠に積み荷を載せたトラックが動けず列をつくった。パキスタンとアフガニスタンの間で、2025年10月12日に銃撃と砲撃が交わされ、タリバン側は「報復」と位置づけて攻撃を認めた。双方の死傷者数は食い違い、貿易と往来は止まり、緊張は一段と深まっている。戦場の外側で暮らしの音がやむとき、対立の影は日常へと伸びる。
国境で何が起きたのか
現時点で確認される範囲では、12日未明から北部国境のクナル、クラム周辺で小火器と砲兵が応酬したとみられる。タリバンの報道官は、パキスタンの空爆に対する報復として越境の軍施設を攻撃し、パキスタン兵58人が死亡、約30人が負傷したと主張した。自軍の死者は9人、負傷は16〜18人と述べ、作戦は限定的だったと強調した。
これに対しパキスタン側は死者数に異議を唱え、自軍の死亡は23人、負傷29人と発表したうえで、タリバンおよび関連勢力200人を「無力化」したと主張した。複数の地点で銃撃が続き、国境警備隊が主要検問所の封鎖を拡大。トルカムとチャマンは閉ざされ、多数の車両が行き場を失った。双方の主張は平行線のままだ。
国境の閉鎖は生活を直撃した。燃料や食料を積む車列は長く伸び、運転手は炎天下で待機を強いられた。両国の貿易は途絶し、アフガニスタン側の市場では供給不安がささやかれる。パキスタン軍報道官は「国民の生命と財産を守るため必要な措置を講じる」として、態勢を強める構えを示した。緊張はにわかに冷める気配を見せない。
主張の食い違いと強い言葉
死傷者数は依然として確認が難しい。アフガニスタン側は「敵に大損害を与えた」と言い、パキスタン側は「攻勢を撃退した」と語る。どちらも相手の越境行為を非難し、実効支配線近くの施設掌握を主張するが、独立した検証は限られている。数字がすれ違うほどに、現場の把握と検証の重要性が浮かぶ。
パキスタンのモーシン・ナクヴィ内相は、タリバンの攻撃を一方的だと強く非難し、民間人への発砲は国際法違反だと主張した。SNSでは「相応の報復」を示唆する強い言葉も使い、緊張を煽りかねない表現が広がった。一方で治安当局筋は国境各所での銃撃を認め、12日夜まで散発的な交戦が続いたとの見立てを示した。
乾いた山岳地帯の道路で立ち往生する列には、運転手の苛立ちと不安がにじむ。人も家畜も行き先を失い、交易の街は静けさに包まれた。こうした日常の揺らぎこそ、数字だけでは見えない衝突の影である。封鎖が長引けば、脆弱な地域経済への打撃は避けられないと映る。人の移動も滞り、生活の縫い目がほつれていく。
背景にある火種と外交の動き
発端は9日夜のカブールでの爆発や、10日に南東部パクティカの市場が攻撃を受けたとの主張にさかのぼる。アフガニスタン側はパキスタンの主権侵害だと非難し、パキスタン側は自国を標的とする過激派がアフガニスタンで庇護されていると反発してきた。タリバン政権は一貫して関与を否定し、両国の確執は長い影を落としている。
外交の場でも動きがあった。2025年10月10日、タリバンのアミール・カーン・ムッタキ外相がニューデリーを訪れた際、インド政府はカブールの拠点を大使館として再格上げすると表明した。医療支援や教育分野を含む協力の拡充も示し、地域秩序の安定化に一定の関与を示唆したといえる。緊張のさなかに、別の扉が開く瞬間でもあった。
一方、湾岸諸国は自制を促していると報じられる。サウジアラビアとカタールが緊張緩和を働きかけたとの情報もあり、12日には一時的な停止が示唆された。とはいえ、越境攻撃の応酬と難民・貿易の問題は根深く、火種は容易には消えない。事実関係の精査と対話の継続が要るとみられる。国境の静けさが戻るまで、時間はかかりそうだ。