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イスタンブールで続いていたパキスタン政府とアフガニスタンのタリバン暫定政権の協議が、2025年10月29日に決裂した。国境地帯の衝突を抑える停戦の持続を探った場だが、「実行可能な解決策」は見いだせず、緊張緩和の糸口は細いままだ。パキスタンのタラル情報・放送相が明らかにし、住民の不安が広がっている。
夜明け前に走った落胆
イスラマバードの空が白み始めたころ、政府関係者の携帯に通知が走った。タラル情報・放送相がXで協議の失敗を示し、「解決をもたらすのに失敗した」と記したのである。併せて「国民を守るため、テロリストとその聖域を破壊するあらゆる措置を取る」と強調し、硬い決意がにじんだ。
協議は停戦の持続化を狙い、10月25日からトルコのイスタンブールで続いてきた。今月に入って国境地帯の戦闘は激しさを増し、多数の死者が出たと伝えられてきた。いったん導入された停戦が持つ命綱のような意味合いは、現地の暮らしに重くのしかかっていたと映る。
しかし、結び目は解けた。双方は決裂の責任を相手に求め、非難の応酬が続いた。現時点で確認されている範囲では、アフガン側の詳細な説明は見当たらない。合意を欠いたまま、緊張の針は再び振れ始めているとみられる。
争点はどこに—停戦を支える条件
道のりはドーハから始まった。10月中旬、双方はカタールの首都で一時停戦を導入し、軍事行動の沈静化に向けた対話の枠組みを整えた。パキスタン外務省の報道官は、越境攻撃を止めるための検証可能な仕組みが不可欠だと繰り返し述べ、責任ある履行を促していた。
第2ラウンドは25日にイスタンブールで始まり、トルコとカタールが後押しした。外務当局は、ドーハ後の一時停戦は「概ね維持された」と評価しつつ、恒常的な枠組み作りには踏み込めていない現実もにじませていた。今回はその溝を埋められず、着地点は遠のいた。
交渉の鍵は、武装勢力の活動をどう抑え、越境の暴力を検証するかに尽きる。監視や通報、連絡窓口、現地での迅速な火消しといった具体の段取りがなければ、停戦は風に揺れる細い糸にすぎない。制度設計の遅れが、現場の不安を増幅させている。
TTPという影
一部報道によれば、争点の背後には「TTP（パキスタンのタリバン運動）」の扱いが横たわる。パキスタン側は制圧や拘束の確約を求め、アフガン側は自らの統制権限を限定的だと述べたとされる。一次の公的説明では固有名は明示されておらず、詳細はなお霧の中である。
TTPはパキスタン国内の治安当局や軍を狙う攻撃を繰り返してきたとされ、ここ数週間も攻撃が報告されている。武装勢力の後背地が国境をまたぐ形で疑われる限り、停戦の持続は脆い。射程の長い不信が、交渉の文言を硬直させる構図が浮かぶ。
それでも外交の窓は閉じ切ってはいない。地域大国のトルコ、調停で存在感を示すカタールは、連絡線の維持に動き続けるとみられる。決裂後に双方が流した強い言葉を、次の合意のための圧力にとどめられるか。境界の町の静けさは、その成否にかかっている。
