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壊れた屋根を押さえる人の手、サイレン、飛び交う無線。ブラジル南部パラナ州で猛烈な竜巻が市街地を直撃し、少なくとも6人が死亡、負傷者は750人規模に達した。被害の中心となったリオ・ボニート・ド・イグアスでは住宅や商業施設の大半が傷み、州は非常事態の上位に当たる「公共の非常事態」を宣言。救助と復旧を一気に進める体制に入った。
救助は続き、負傷者は拡大
現地の救助要請は途切れず、がれきの間を消防隊が担架を運ぶ動きが続いている。2025年11月8日、州の集計で治療を受けた人は750人に到達し、死亡は6人、行方不明1人が確認された。重症例の一部は広域搬送となり、地域の病院は手術と入院の受け入れを続ける。隊員や医療スタッフは交代で現場を離れず、応急の診療拠点も拡充された。
犠牲者の内訳は、被災地の町で5人、周辺の農村部で1人。被災規模が大きい区域では家屋の倒壊が相次ぎ、救助の難易度が上がっている。通信が不安定な地区から新たな情報が届くたび、探索の範囲は広がる。通報はなお続いており、当局は安全確保を優先した二次被災の防止と、避難の長期化を見据えた医療・物資の継続供給を急ぐ。
町をえぐった風、その痕跡
気象当局の分析では、被災地で観測された突風は時速250kmを超えた可能性がある。中心となった町では、住宅や商業施設の約9割が何らかの被害を受けた。屋根板は遠くまで飛散し、サイロやガソリンスタンドの構造物も耐えきれなかった。空撮には、壁が抜けた建物の列と、倒れた柱の間を縫うように進む重機の姿が映る。
道路では信号機と電柱が傾き、断線が復旧の足かせになった。送配電と給水の担当部局は応援要員を増派し、発電機や給水車を投入して臨時の生活線をつなぐ。片づけが進む一方で、建物の基礎まで損傷した区域も多い。住民は自宅付近の危険箇所を避け、崩落の恐れがある壁や木、電線には近づかないよう繰り返し注意が促されている。
非常事態の宣言と動員
州政府は同日、被災地の町に「公共の非常事態」を宣言した。これにより、調達手続きの簡素化や州資金の即時投入、連邦支援の要請が可能となる。知事は「州の歴史で前例がない規模」と述べ、住宅再建の検討と一時的な避難場所の整備を指示。土木、保安、医療、ライフライン各部門が横断で動き、道路の啓開と応急修理、物資輸送の動線確保にあたる。
支援物資は屋根材や食料、衛生用品、寝具まで幅広く、需要の偏りを避けるため受け入れ窓口を絞っている。医薬品と輸液は州の備蓄から順次放出され、周辺自治体からの応援も重なった。住民への指示は、開けた場所を避け、破損した建物や樹木、電線に近づかないことが要点である。危険地域の立ち入り規制と巡回が強化され、見回りの足音が夜まで続く。
壊れた日常をつなぐ手
朝、校庭に設けられた拠点では、毛布を抱えた親子が名簿の呼びかけに応じて進む。ボランティアは破片を避けて通路を作り、子どもに水を手渡す。避難の見通しはまだ立たないが、通電した区画が少しずつ広がり、店舗のシャッターも慎重に開きはじめた。町は深く傷んだまま、暮らしの音だけが少しずつ戻りつつある。
片づけの合間、住民は屋根の破片を拾い集め、痛んだ柱に目印のテープを結ぶ。復旧の速度は場所ごとに違い、足踏みする区域もある。それでも、物流の動きと復旧班の到着が増えるほど、日常の断片はつながっていく。騒音がやわらぐ夕刻、風に揺れるビニールシートの音が、再建の長い道のりを静かに知らせていた。
