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パキスタン北西部ペシャワルの国境警備隊本部前で爆発音が響いたのは、2025年11月24日の朝だった。銃声と救急車のサイレンが鳴りやまぬうちに、翌25日未明には今度はアフガニスタン側の空から火の粉が降った。タリバン暫定政権は、隣国パキスタンの攻撃で子どもを含む民間人10人が死亡したと非難し、国境地帯の緊張は一気に高まっている。
国境を挟んだ連続攻撃
国際通信社の報道によると、24日朝、パキスタンのカイバル・パクトゥンクワ州ペシャワルでは、連邦準軍警察（Federal Constabulary）の本部が自爆攻撃と銃撃を受けた。自爆犯2人と武装した男1人が門を突破しようとし、応戦した治安部隊との間で銃撃戦となり、隊員3人が死亡、少なくとも11人が負傷したとされる。犯行声明は出ていないが、治安当局はパキスタン・タリバン運動（TTP）の関与を疑っている。
その数時間後、タリバン政権のザビフラ・ムジャヒド報道官は、Xで「パキスタンの空爆」がアフガニスタン南東部ホスト州グルブズ地区ムガルガイを襲ったと発信した。現地の民家1軒が破壊され、男児5人と女児4人、女性1人の計10人が死亡したとし、全員が一般市民だと説明する。さらに同じ夜には、国境沿いのクナール州とパクティカ州も標的となり、空爆で民間人4人が負傷したと主張した。パキスタン側はこれらの指摘に公式なコメントを出していない。
揺らぐ停戦とTTPをめぐる攻防
今回の空爆疑惑は、もともと脆い停戦の上に積み重なった。両国は10月、パキスタン側がカブールなどを空爆したとアフガニスタンが訴え、国境地帯で激しい銃撃戦が続いた末、カタールとトルコの仲介で19日に停戦に合意したばかりだった。その後も協議は行われたものの、TTP戦闘員がアフガニスタン領内を拠点にしているとするパキスタンの主張と、関与を否定するタリバン側の立場は平行線をたどっている。
ペシャワルの攻撃では、国営放送が「実行犯の1人はアフガニスタン国籍」と伝え、アシフ・アリ・ザルダリ大統領は、外国の支援を受けるTTPを名指しで批判した。今月には首都イスラマバードで別の自爆攻撃が起き、12人が死亡しており、その一派が犯行を認めている。アフガニスタンのタリバンと思想的に近いTTPの動きが、国境地帯の緊張を一段と高めているとの見方が広がる一方で、停戦合意自体は形式上まだ維持されている。砲声が止んだ静かな谷筋にも、次の一撃への不安だけが長く影を落としている。
