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記者団の前で具体的な数字が読み上げられた。ポーランド政府は2025年11月6日、防衛力の底上げに向け、来年末までに最大50万人の希望者を訓練する計画を公表した。ロシアの侵攻が続く現実とカリーニングラードに接する国境の緊張を見据え、社会全体で備える枠組みを広げる狙いだ。
広がる訓練計画の狙い
会見でコシニャクカミシュ国防相は、事態のさらなるエスカレーションに備え、国家と国民の準備を進めると語った。軍の即応だけでなく、停電や避難、応急手当といった危機対応の基本を日常の延長として身につける、という説明だ。抑止と生存性の双方を高める発想がにじむ。
計画名は「常に備えよ」。対象は希望するすべての国民で、個人とグループの両セッションを用意するという。小中学生から労働者、高齢者まで幅広く開き、今年末までに10万人、2026年末までに約40万人の受講を見込むとトムチク国防副大臣が見通しを示した。申し込みは広く利用される政府の公式アプリ経由で行える。
社会全体で備える形へ
年齢や職業にかかわらず参加できる構えは、災害対応の訓練に近い親しさを意識したものだ。保護者と子どもが同じ場で初歩を学び、企業の従業員研修に安全衛生と並べて危機対応が入る。家庭と職場を軸に、いざという時の連絡、集合、役割分担を整える実務が前面に出る。
国境地帯の現実も背中を押す。ベラルーシやカリーニングラードに面する地域では、越境の挑発やドローンの脅威が話題にのぼることが増えた。政府は国境の防御整備を進める一方で、住民が冷静に対処できる素地を広げることを重視する。ウクライナが2022年に不意を突かれ、戦時下で技能を身につけたという教訓が下敷きにある。
国防支出の重みと隣接リスク
国防相はあわせて、来年の国防予算がGDP比4.8%の過去最高水準に達する見通しだと述べた。すでに欧州有数の比率にある同国の支出は、兵站と弾薬、要塞化の投資を厚くし、訓練の場や教材にも波及する。財政の負担は増すが、抑止の効果と背中合わせで受け止められている。
NATOの東側を支える位置の重さは変わらない。計画は国境の部隊だけに寄せず、社会機能を保つ道を広げる狙いがある。停電への備え、通信の冗長化、避難の動線確認など、軍事と民生の間にある実務が積み上がるほど、隙は小さくなる。静かな段取りが、国境をはさむ緊張に輪郭を与えていく。
