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兵士の声が反響する病院の一室で、ロシアのプーチン大統領が核搭載可能な原子力魚雷「ポセイドン」の実験成功を告げたのは2025年10月29日である。前日の28日に行われた試験は核動力の作動まで踏み込んだとされ、同国の核抑止と対外示威の文脈で大きな意味を持つと映る。
病院で語られた「前例のない兵器」
大統領はモスクワ市内の軍病院を慰問し、負傷兵の前で試験の成功を明言した。発言によれば、試験は2025年10月28日に実施され、潜水艦からの発射に続いて原子炉の起動に成功したという。具体的な試験海域や航走時間の詳細は示されていない。
プーチン氏は「これほどのものは他にない」と述べ、迎撃不可能性を強調した。現時点で確認されている範囲では、初めて核動力での運用状態に入ったと説明しており、同兵器の成熟度を誇示する狙いが浮かぶ。一方、性能の検証は独立に確認されていない。
ロシア側や軍事専門家の推計では、ポセイドンは全長20メートル、直径1.8メートル、重量100トン級。射程は1万キロ、速度は時速185キロ前後とされ、沿岸部に壊滅的被害を及ぼし得ると指摘される。ただし数値はいずれも公的仕様として確定していない。
相次いだ核関連の示威
この発表の3日前、2025年10月21日には原子力推進式巡航ミサイル「ブレベスニク」の発射実験が成功したと報告された。参謀総長は飛行距離約1万4000キロ、飛行時間約15時間と述べ、核動力により長時間の回避機動が可能だと強調した。
翌22日には戦略核戦力の発射手順を検証する演習も実施されたとされる。実射訓練の範囲や搭載弾種の詳細は限られるが、核運用の実効性を誇示する一連のシグナルが続いた格好だ。対外的には、西側の圧力に屈しない意思表示と映る。
プーチン氏は、こうした新型兵器群を2018年に初公開して以降、米国のミサイル防衛網やNATO拡大への対抗措置と位置づけてきた。2001年のABM条約離脱以降の流れを挙げ、核抑止の均衡を保つための技術的回答だと示唆している。
揺れる抑止と海の深層
水中を自律航走する核動力兵器は、従来の弾道・巡航ミサイル中心の抑止構図を大きく撹乱し得る。探知や迎撃の困難さが増す一方、警戒段階の判断を複雑化させるため、危機管理の余白を狭めるとの懸念が広がっている。
他方で、運用実態や配備時期、指揮統制の安全装置などは不透明だ。大統領発言は強い自信を示したが、第三者による技術的裏付けは限られる。核兵器の新たなカテゴリーに属する可能性も指摘され、既存の軍備管理枠組みとの整合はなお課題である。
海の深層での抑止をめぐる競争が加速すれば、沿岸都市や海上交通のリスク評価も変わる。各国は対潜・監視体制の再設計を迫られかねない。短期的には、関係各国の声明と追加試験の有無が、緊張の度合いを占う手がかりになるとみられる。
