本サイトの記事や画像はAIが公的資料や報道を整理し制作したものです。ただし誤りや不確定な情報が含まれることがありますので、参考の一助としてご覧いただき、実際の判断は公的資料や他の報道を直接ご確認ください。[私たちの取り組み]
北の海に面した空域を巡回していた英空軍の哨戒機のコクピットに、突然まぶしい光が突き刺さったという。その視線の先にいたのは、ロシアの情報収集艦「ヤンタル」だった。英国のジョン・ヒーリー国防相は2025年11月19日、この艦が英軍機にレーザーを向けた事案を公表し、操縦士の命を危険にさらす挑発だと強い口調で批判した。英側は、事態次第では軍事行動も辞さない構えをにじませている。
英軍機を照らしたレーザーと変わる監視態勢
ヒーリー国防相によれば、レーザーが浴びせられたのは海上監視用のP-8ポセイドン哨戒機で、ロシア艦の動きを追っていた最中だった。場所はスコットランド北方、英国の排他的経済水域の縁にあたる海域とされる。軍用機へのレーザー照射は、一瞬で視界を奪い墜落につながりかねないため、民間機への照射以上に重大な危険を伴う。英政府は、ロシア艦が英空軍機にこうした行為をとったのは初めてだとして、通常の接近とは次元の異なるエスカレーションと受け止めている。
英軍はすでにフリゲート艦や複数のP-8機を投入し、ヤンタルの周囲を「一挙手一投足まで追う」(趣旨)体制に入ったとされる。ヒーリー氏は、ロシア側が針路を南へ変え、英本土近くの海底ケーブルなど重要インフラに近づく場合には、軍として準備済みの選択肢を行使し得ると示唆した。また海軍の交戦規則を改定し、自国周辺海域で同艦により接近して追尾できるようにしたとも明かした。こうした決定の背景には、近年増えているロシア軍機や艦艇による北大西洋条約機構(NATO)周辺での挑発行動への警戒感がにじむ。
海底ケーブルをめぐる静かな綱引きとロシアの反論
ヤンタルは、ロシア国防省の深海研究組織「深海研究総局(GUGI)」が運用するとされる情報収集艦で、公式には海洋研究船と説明されている。一方、西側の専門家は、同艦が遠隔操作の無人潜水機を運用し、海底通信ケーブルやエネルギー施設の位置や構造を精密に把握できるとみてきた。インターネットや国際通話、金融取引を支えるケーブル網は海底に張り巡らされており、一部が損傷するだけでも社会基盤に大きな影響が出る。ヒーリー氏が「平時の監視と有事の妨害の両方に使える存在」と位置づけるのは、その脆弱性を踏まえた評価でもある。
これに対し、在ロンドンのロシア大使館は、ヤンタルは国際法にのっとり国際海域で調査活動を行っているだけだと反論した。声明では「英国の利益や安全保障を損なおうとする意図はない」「英の海底通信には関心がない」と主張し、むしろロンドン側が反ロシア感情をあおり欧州の緊張を高めていると批判した。ポーランドの軍用鉄道を狙ったとされる爆発など、欧州各地で疑惑の目が向けられる破壊工作が相次ぐなか、今回のレーザー照射も「静かな攻防」の一端として受け止められている。
北の海に浮かぶ一隻の船を巡る視線には、見えない綱引きの重さがにじむ。