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政府・与党は、年間所得1億円を境に所得税の負担率が下がる「1億円の壁」をただすため、超富裕層向けの追加課税を大きく見直す方針だ。現在は総所得がおおむね30億円を超える人だけが対象だが、基準を約6億円超まで広げ、適用税率も22.5%から30%へと引き上げる案で調整している。2027年分の所得から導入し、26年度税制改正大綱に盛り込む方向で、超富裕層にも一定の最低負担を求めることで、税の公平感を高めたい考えだ。
6億円超まで対象拡大 超富裕層の「最低税率」を引き上げ
今回見直しの舞台となるのは、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」と呼ばれる仕組みだ。これは、株式や不動産の売却益など、比較的低い税率が適用される所得の比重が高い人に対し、一定水準以上の所得には、少なくとも決められた税率で税金を負担してもらうという「ミニマムタックス(最低税率)」の一種である。金融所得が厚い超富裕層に、抜け道なく一定水準の税負担を求める狙いがある。
現行制度では、基準となる所得が3.3億円を超えた部分に22.5%の税率をかけ、その金額から通常の所得税額を差し引いた分を追加で納める仕組みで、実務上は総所得がおおむね30億円を超える人が対象になるとされてきた。対象者は全国で数百人規模にとどまり、「1億円の壁」の是正策としては範囲が狭いとの指摘が、導入当初から付きまとっていた。
政府・与党が検討する新たな案では、この追加課税の対象を総所得約6億円超にまで広げ、適用税率も30%に引き上げる方向とされる。対象者が大きく増えることで、数千億円規模の税収増が見込まれるとの見方もあり、「ごく一部の超富裕層」に限定されてきた負担の適正化を、より広い層に及ぼす転換点となる可能性がある。
「1億円の壁」は崩れるか 金融所得優遇が残す課題
そもそも「1億円の壁」とは、総所得が1億円前後に達すると、それ以上所得が増えても平均的な所得税の負担率が下がっていく現象を指す。給与などは金額に応じて最高45%(地方税を含めると55%)まで累進的に税率が上がる一方、株式の売却益や配当などの金融所得には、約20%前後の一律税率が適用される。高額所得者ほど金融所得の比重が高くなるため、全体としての負担率が中堅層より低くなる逆転が生じてきた。
こうした構造を背景に、政府は超富裕層にミニマムタックスを課すことで、「最低限ここまでは負担してもらう」というラインを設けてきた。30億円超を念頭に置いた現行ルールは、金融所得中心で極端に税負担が軽くなる一部の層をとらえる効果はあるものの、「1億円の壁」という名前から受ける印象に比べると、届く範囲があまりに狭いとの批判も根強かった。今回、基準を6億円超にまで引き下げる案は、そのギャップを縮めようとする試みだといえる。
もっとも、6億円超でも対象は依然としてごく一部の富裕層に限られ、給与と金融所得の税率差そのものは手つかずのままだ。欧米では資本所得への課税強化や富裕税の議論がたびたび浮上しており、日本でも今後、配当やキャピタルゲインの扱いをどうするかが改めて問われる可能性がある。今回の見直しは、超富裕層に対する「最低税率」を引き上げる一歩でありつつ、1億円の壁そのものを完全に消し去るには、なお議論の余地が残るだろう。
