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モスクワの官報サイトに、新たな大統領令がひっそりと掲載された。署名したのはプーチン大統領、題名は「2036年までのロシアの国策戦略」。2022年の侵攻後にロシアが編入を主張するドネツク、ルハンスク、ザポリージャ、ヘルソンの4州で、ロシア語と「ロシア人としての自認」を根付かせることを柱とする文書だ。2026年1月の施行を前に、戦場となった地域で人びとの心とことばをどこへ導こうとしているのかが問われている。
占領地で進む「ロシア人化」計画とは
この戦略は、2036年までに国内人口の少なくとも95%が自らをロシア人だと考える状態を目標に掲げる。対象には本土だけでなく、2022年以降に一方的な併合が宣言された4州も含まれる。国の民族・宗教・言語政策の方向性を長期的に定める文書とされ、ロシア側は東部や南部の支配が「歴史的な領土の統一を回復する条件をつくる」と主張する。併合はウクライナ政府や多くの国に認められておらず、国際法上も激しい異議が突きつけられている。
文書は、ロシア語の使用と「ロシアの市民的アイデンティティー」を強化する追加措置をとるよう当局に命じている。狙いとして、「非友好的な外国」が民族間や宗派間の関係を不安定化させ、社会を分断しようとしていると非難し、それに対抗する必要性を挙げる。具体策の詳細はこれからだが、教育やメディア、行政サービスなどを通じてロシア語とロシア国民としての自己認識を標準とみなす仕組みが、占領地にも広げられていく可能性が高い。
揺らぐウクライナ社会と言葉の選択
もともとロシアとウクライナのあいだには、帝政期やソ連期を通じた往来があり、東部や南部では家庭や職場で2つの言語を使い分ける人が多かった。だが2022年の全面侵攻後、ウクライナ国内ではロシアへの好意的な感情が急速に薄れ、世論調査でもロシア語を日常的に使う人の割合が大きく減っているとされる。爆撃や占領を経験した人びとにとって、言語の選択は便利さだけでなく、どちらの側に立つかという姿勢の表明になりつつある。そこへ「ロシア人としての自認」を高める国策が重ねられた。
ロシア軍は今も4州すべてを完全には掌握しておらず、前線は動き続けている。それでも新戦略は、将来の停戦や和平の有無にかかわらず、住民の国籍意識を書き換えていく長期計画を打ち出したと言える。識者の中には、人口統計や学校教育、メディア空間を通じた同化政策は、事実上の「人口工学」として国際社会の反発を招きうると警告する声もある。砲撃音がやまない土地で、戸籍や教科書の文字だけが静かに塗り替えられていく光景が、今後の東部情勢を映すひとつの鏡になりそうだ。
