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机いっぱいに積まれたローン書類を前に、若い申込人たちが事情を語る。埼玉県警に詐欺容疑などで逮捕されたのは、住宅ローンを使って不動産投資資金を集めたとされる男女16人だ。居住用でしか借りられないはずの資金を投資用に転用し、不動産の知識に乏しい20~30代の若者を巻き込みながら、複数の金融機関から繰り返し融資を引き出していた疑いがある。
「賃料で返済できる」と誘い、年収を「ふかす」
グループは、東京や神奈川の土地や住宅を購入する名目で融資を申し込ませた。実際には投資用物件であるにもかかわらず、自宅として住むと装って住宅ローンを利用させたとされる。若者には「毎月の家賃収入がローン返済を数万円上回り、手元に利益が残る」と説明し、老後資金づくりや副収入への不安につけこんで申込人に仕立てていった。
その際に使われたのが、年収を実際より高く見せる「ふかし」と呼ばれる手口だ。申込人に架空の副業先を用意し、数百万円の副収入があるように装った源泉徴収票を作成。税務署に確定申告書を提出させ、自治体から課税証明書を取得し、金融機関へ提出させていた。増えた税金分はグループ側が負担し、紹介役、書類偽造役、金融機関担当など役割を分担。融資金で建設する住宅は仕様を落としてコストをおおむね半額に抑え、浮いた分を「収益」として吸い上げていたという。
巻き込まれる若者と、続いてきた不正融資の影
埼玉県内の看護師の女性は、老後の備えを考えて投資セミナーに参加したことから、このグループと関わった。担当者からは、成功例とされる物件の資料を示され、「手続きは専門家に任せればよい」「年収の水増しは皆がやっている」と説得されたという。女性は水増しされた年収を前提に、約6150万円の住宅ローンを申し込みかけたが、知人から違法性を指摘され、犯罪にあたると気づいて金融機関に連絡し、融資は実行されなかった。このケースでは、書類を提出した行為が詐欺未遂にあたるとして、女性自身も書類送検されている。
年収の水増しや投資目的の隠蔽は、この事件だけの問題ではない。投資用アパートやシェアハウス向け融資で不正が発覚したスルガ銀行では、第三者委員会の調査で約3万7900件の投資用不動産融資のうち2割前後で審査書類の改ざん・偽造が確認され、組織的な不正と認定された。 不動産投資に詳しい弁護士は、金融機関が融資後も確定申告書を定期的に確認し、家賃収入の有無から投資利用を把握する仕組みを提案する。ファイナンシャルプランナーも、投資経験の乏しい若者が「必ずもうかる」との言葉を信じて年収の水増しに応じれば、刑事責任を負う危険があると指摘する。書類の数字が一度動かされれば、その重さは、当事者の人生の長さにわたってのしかかる。
