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秋の空気が冷え込む道央で、投資話が静かに牙をむいた。空知管内の50代女性が現金1500万円をだまし取られた事件で、マレーシア国籍の男と中国国籍の女が逮捕され、2025年10月18日に送検された。自宅訪問で現金を手渡させる古典的な手口だが、背後には海外籍の役割分担と通訳を介した巧妙さがのぞく。地域の暮らしに混じる「投資」への期待と不安、その境界が問われている。
手渡しで消えた1500万円
空知の住宅街に冬の気配が差し込む午後、女性の玄関先に見知らぬ来訪者が立った。警察によれば、事件が起きたのは2023年2月である。国際証券会社の社員を名乗る者から「お金はスタッフに渡してほしい」と指示があり、女性は訪問してきた受け子に現金1500万円を手渡したとされる。振込ではなく手交を選ばせるやり口に、組織的な準備の跡が浮かぶ。
指示役は自ら姿を見せない。家の電話やメッセージだけが先導し、最後の瞬間だけ“スタッフ”が現れる。今回もその導線が踏襲されたとみられる。現金の受け渡しを伴う投資勧誘は、金融機関の一般的な手続から外れる。手数料や利回りの数字が整って見えても、段取りの違和感が危険信号になる。女性の家で起きたことは、誰の家でも起こり得る。
被害は一瞬で成立するが、回復は長い。現金での手渡しは痕跡が乏しく、資金の流れを追う捜査は難度が上がる。警察は受け子の足取り、連絡手段に残る電子記録、車両の移動履歴などを重ね合わせて全体像の解明を進めているとみられる。1500万円という金額は家計や老後設計に直結する。数字の重みが、静かな住宅街に残響している。
通訳と送迎、役割分担の輪郭
送検されたのは、住所不定のマレーシア国籍の会社役員、トー・シェン・ボク容疑者と、札幌市在住の中国国籍の会社役員、曹海艶容疑者(37)である。警察によると、2人は共謀し被害女性の自宅を訪問。トー容疑者が現金の受領役とみられ、曹容疑者は車での送迎と中国語を交えた会話で通訳を担った疑いが持たれている。玄関先での会話を円滑にし、受け渡しを確実にする役割分担だ。
曹容疑者は調べに対し「私は人を騙していない」と容疑を否認している。意図の有無、関与の範囲をめぐっては今後の処分で判断が分かれる。送迎だけ、通訳だけという主張は詐欺事案で繰り返されるが、現場での言動や連絡の往来、報酬の授受など、周辺の具体事情が立証の焦点になると映る。警察は余罪の有無も視野に、関係先の捜索や通信履歴の解析を進めている。
玄関のチャイムから数分のやり取りで巨額の現金が動く構図は、国内外の詐欺グループが使い回してきた。土地勘のない者を運転役に据え、地元で目立たぬ車両を用意し、言葉の壁は通訳で埋める。今回の逮捕と送検は、その歯車の一部を押さえた段階に過ぎない可能性がある。捜査線上に浮かぶ他の受け子や指示役の所在が、今後の鍵を握る。
SNS投資の甘い誘い、守るべき勘どころ
「国際証券会社」を名乗る肩書は、遠くて確かめにくい場所を装う常套句だ。口座開設や契約書がないまま現金の手渡しを求める段階で、投資ではなく詐欺に軸足が移っている。公的機関は、投資や還付をちらつかせた手口への注意を繰り返し呼びかけている。具体的には、見知らぬ連絡先からの勧誘は即断で遮断し、家族や最寄りの警察、金融機関にまず相談することが基本線である。
実在の会社名や著名投資家の顔写真、利回りの実績グラフなどは、コピーや生成画像で容易に装える。連絡の舞台がSNSやメッセージアプリに移るほど、審査や苦情処理といった正常な投資プロセスは細る。送金先が個人口座だったり、現金の手交を迫るなら危険域だ。疑問が生じた時点で、契約書・交付書面・担当部署の内線番号といった「足のつく資料」を求めることが抑止力になる。
地域で守る備えも要る。自治会の回覧や職場の朝礼、学校の保護者会で、最新の注意喚起を共有するだけでも効果は大きい。電話での指示に従ってATMや手渡しに向かう高齢者や単身者を見かけたら、声を掛ける合図の文化を育てたい。今回の事件は、被害者の責任ではない。巧妙化する手口に個人で抗うには限界がある。警察の捜査と地域の相互見守り、その両輪が必要だ。