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大学進学率を算出するための「18歳人口」から、特別支援学校中学部の卒業生が外されてきたことが、毎日新聞の調査で明らかになった。中央教育審議会などが教育政策の土台として用いる重要な指標だが、最新の2024年度では、この扱いにより公表された大学進学率が実際より高く示されていた。右肩上がりのグラフの背後で、誰を数に含めて教育の成果を測るのかという根本的な問いが浮かび上がる。
見えない18歳たちが進学率の外に置かれている
学校基本調査では、大学進学率を「大学入学者数」を「3年前の中学校卒業者数」で割って求めている。しかし中学校卒業者には、障害のある子どもが通う特別支援学校中学部の卒業者が含まれていない。1999年度に今の算出方法が導入されて以来、この前提は見直されないまま続き、統計上の18歳人口から彼らは外されてきた。
文科省は2024年の18歳人口を106万3451人とし、大学進学率は59.1%で過去最高と説明している。一方で、同年度の特別支援学校中学部の卒業者1万892人を加えれば、18歳人口は約107万3千人となり、進学率は58.6%に下がる計算だ。わずか0.5ポイントの差でも、当事者や家族から見れば「最初から勘定に入っていなかった」という感覚を残しうる。
特別支援学校の在学者数は近年増え続け、2023年度には約15万人と過去最多になった。にもかかわらず、進学率の土台となる18歳人口からは外れたままである。障害のある若者の進路は福祉や就労支援と深く結びついており、統計の枠外に置かれることは、その声が政策議論の場に届きにくくなることも意味する。見えない18歳が増えるほど、教育の実像と指標とのずれは大きくなる。
少子化と大学競争が強める「18歳人口」偏重
18歳人口は、中央教育審議会の資料や大学団体の分析でも繰り返し参照される、教育政策の基本データだ。リクルート進学総研などの民間調査では、18歳人口の推移と進学率、地元残留率がまとめられ、大学や自治体の定員計画や募集戦略の前提になっている。少子化で学生数の先細りが避けられない中、この数字は「奪い合うべきパイ」として過熱気味に注目されてきた。
最新の推計では、18歳人口は2024年の約106万人から2036年には94万人台へと、およそ1割強減ると見込まれている。地方では、私立大学の半数以上が定員割れに直面しているとの報告もあり、わずかな進学率の変化が経営の明暗を左右しかねない状況だ。だからこそ、統計上の「18歳」が誰を含み、誰を含まないのかという前提を曖昧にしたままでは、政策論議そのものが現場からずれていく。
進学率の算出から特別支援学校の卒業者が外れている事実は、大学側が彼らを「想定する学生像」に十分含めてこなかった現実も映し出す。障害のある生徒の中には、通信制や専門学校、大学進学を希望する人もいるが、統計が拾わなければ入試や学内支援の整備は後回しにされやすい。数値として可視化されない存在は、大学再編や定員政策をめぐる議論でも後景に退きやすいのである。
誰を基準に教育の成果を測り直すのか
今回の問題は、算式を修正すれば解決するという単純な話ではない。18歳人口を実年齢ベースで捉え直し、障害の有無にかかわらず同じ土俵で進路データを集計するのか、それとも特別支援教育独自の指標を併用するのか。教育の成果をどの枠組みで測るかという、価値観にかかわる選択が問われている。進学率の「高さ」だけを追い求める姿勢とも距離を取る必要がある。
算出方法の見直しを進めるにしても、文科省の内部だけで完結させるのではなく、特別支援学校やインクルーシブ教育の現場で経験を積んできた教員、障害当事者や保護者の意見を反映させることが欠かせない。進学率に特別支援学校の卒業者を加えれば、数字は一時的に下がるかもしれないが、それは教育機会の格差を可視化するための出発点になりうる。
少子化が進み、一人ひとりの18歳がより貴重な存在になっている今こそ、統計の枠から漏れてきた若者を教育政策の中でどう位置づけるのかが問われている。進学率のわずかな上振れに安心するのではなく、「誰を数え、誰を支えるのか」を見直す作業こそが、これからの高等教育をより包摂的なものにしていくための第一歩になるだろう。
