香港・大埔区の公営住宅火災 ビラ配布の24歳学生拘束後に釈放

香港・大埔区火災の責任はどこへ 原因解明ビラ配布の学生が警察署を後に

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香港・大埔区の公営住宅団地で11月末に起きた高層集合住宅火災は、少なくとも150人近い命を奪う戦後最悪級の惨事となった。その原因を独立して調べるよう求めるビラを配り、拘束されたと報じられた24歳の学生が12月1日、警察署を静かに後にした。追悼の花束と一枚のビラが並ぶ光景は、大事故の責任を誰がどこまで問えるのかという、香港社会の新たな問いを浮かび上がらせている。

花束とビラが示す、被災地のささやかな抵抗

火災の現場となった宏福苑には今も、多くの人が花やカードを手向けに訪れる。そこには、犠牲者への悼みとともに「真相究明」「責任の説明を」といった言葉が書き込まれている。市民らが立ち上げたオンライン請願では、政府高官の説明責任、独立調査の設置、住民の適切な再定住、工事監督制度の見直しという四つの要求が掲げられ、ロイター通信の報道では短時間で1万件を超える賛同が集まったとされる。追悼と同時に、生活の土台そのものを問い直す動きが重なっている。

そうした流れを街頭で支えた一人が、中国大学に通う24歳の学生だ。各紙の取材によれば、火災から数日後の夕方、彼は焼け落ちた団地に近い鉄道駅前でビラを配り、「これは避けられたはずの人災だ」と訴えたと紹介されている。高層住宅に暮らす多くの若い世代と同じ目線から、「安い資材に命を預ける社会でよいのか」と問いかける行動でもあった。ビラにはオンライン請願へのQRコードも印刷され、通り過ぎる住民の一部は足を止めて話を聞き、静かに受け取っていったという。

しかし、この学生はその後「扇動の疑い」で国家安全部門に拘束されたと地元メディアが報じ、請願サイトや関連SNSの一部は閲覧できなくなった。12月1日午後、AFP通信の記者は、長沙湾警察署からタクシーに乗り込む若い男性の姿を確認している。彼はマスクを一瞬下げ、報道陣に軽くうなずいただけで何も語らなかった。処分内容は公表されておらず、仲間のボランティアたちは「どこまで声を上げれば一線を越えるのか分からない」と不安を募らせている。

安全対策と治安維持、当局が掲げる「二つの責任」

一方で、当局は火災そのものの責任追及を強調する。捜査当局の発表や各紙の報道によれば、宏福苑では外壁改修工事のため8棟すべてが竹の足場と緑色の防護ネットに覆われており、採取したネット20サンプル中7サンプルが防炎基準を満たしていなかった。さらに、可燃性の発泡材パネルが外壁やエレベーターホール周りに使われていた疑いも指摘されている。これらを踏まえ、工事を請け負った企業の幹部ら13人前後が過失致死や汚職の疑いで逮捕され、主要プロジェクトが停止に追い込まれた。

そうした「安全責任」の追及と並行して、当局は「治安維持」の名の下に言論面への対応も強めている。オンライン請願やビラ配布に関わった市民に対して、国家安全法に基づく「扇動」や「政府への憎悪の扇動」の疑いで事情聴取や拘束が行われたと、ストレーツ・タイムズや英紙など複数メディアが伝える。警察は個別の逮捕について確認を避け、「実際の状況に応じて法律に基づき行動する」との定型的なコメントにとどまっている。安全対策の不備を指摘する行為そのものが、いつ治安問題とみなされるのか、その線引きは見えにくい。

香港では長く、重大事故が起きると判事が率いる公開の独立調査委員会を設置し、原因や行政の対応を時間をかけて検証する慣行があった。英紙などの報道によれば、今回の火災では現時点で、政府部門による合同タスクフォースを設ける方針が示されているにとどまり、公開ヒアリングの枠組みは見えていない。安全違反を捜査する主体と、情報公開や説明責任のあり方を決める主体が同じであるとき、市民はどこまで調査の独立性を信頼できるのか。この構図が、ビラ配りのような小さな行為に過剰な緊張を生んでいる。

問われるのは建物だけでなく、説明責任の土台

高層住宅火災への向き合い方は、国によって大きく異なる。例えば2017年に72人が死亡したロンドンのグレンフェル・タワー火災では、被害者遺族の証言を公聴会形式で聞き取り、設計や規制の欠陥を洗い出す独立調査が公開で続けられてきた。香港でもかつては、同様の判事主導の調査委員会が金融危機や大事故の検証に使われてきた経緯がある。今回、オンライン請願の参加者が「独立調査」を求めるのは、単に責任者探しをしたいからではなく、閉ざされた手続きでは再発防止策への信頼が生まれにくいと感じているからだろう。

中国中央政府は今回の火災を受け、高層ビルの防火体制を全国的に点検するキャンペーンを立ち上げ、竹の足場や防炎性の低いネットの使用状況を重点的に検査するよう各地に指示したと国営メディアは伝える。一方で、ヒューマン・ライツ・ウォッチなど国際人権団体は、物理的な危険源を取り除くだけでなく、住民が不正や怠慢を安心して告発できる環境がなければ、安全対策は絵に描いた餅になると警鐘を鳴らす。検査する側にとって耳の痛い指摘こそ、早めの是正につながるからだ。

今回の火災は、香港でここ75年で最悪とされる犠牲を出した。焼け焦げた外壁の前で、学生が警察署から出てきたときに見せた短い会釈は、恐れと、それでも疑問を口にしようとする意志の両方を映しているように見える。被災者の生活再建と並行して、「なぜこんなことが起きたのか」と問う声そのものを守れるのかどうか。建物の安全基準だけでなく、説明責任を支える土台をどう立て直すかが、これからの香港社会に突き付けられた課題である。

参考・出典

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