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台北で担当官が声明を読み上げたのは、2025年11月21日の午後だった。東京電力福島第1原発事故をきっかけに続いてきた日本産食品への輸入規制を、この日付で全て終わらせるという内容だ。長年、産地証明書や放射性物質の検査報告書をそろえてきた輸入業者たちは、静かにその一文を聞き届けた。
書類義務が消えた日 福島事故から続いた規制に区切り
台湾は2011年3月の原発事故直後、日本から入る食品全般に規制をかけ、対象や手続きを少しずつ緩めてきた。今回の決定で、日本から輸入される全ての食品に求めていた産地証明書が不要になり、福島、茨城、栃木、群馬、千葉の5県産について課していた放射性物質検査報告書の提出義務も外れた。輸入そのものは既にほぼ解禁されていたが、実務上の負担となっていた最後のハードルが取り除かれた形である。
この方針は9月1日に公表され、60日間にわたり市民や業界から意見が募られた。衛生福利部などの当局は、その間も過去の検査データを検証し、2011年以降に26万件を超える日本産食品の放射性物質検査で基準超過は見つかっていないと説明してきた。科学的データから追加被ばくの危険性は極めて小さいと評価し、その結論を踏まえて年内の撤廃に踏み切ったとされる。
中国の輸入停止と対照的な選択 浮かび上がる対日姿勢
同じ時期、中国政府は日本の高市早苗首相が台湾有事に言及した国会答弁に反発し、日本産水産物の輸入を事実上止めている。処理水放出への批判も重なり、日本の水産業には大きな打撃となった。その一方で、台湾の頼清徳政権は日本産ホタテなどを前に笑顔で写る写真をSNSに投稿し、安全性に問題はないとの立場を国内外に示してきた。今回の全面撤廃は、そうした政治的メッセージを制度面でも裏付ける動きといえる。
書類がいらなくなることで、東北や関東の生産者にとって台湾向け輸出は手続きが簡素になり、コストも幾分か軽くなるとみられる。ただ、規制が消えたからといって消費者の不安がすぐになくなるわけではない。台湾当局は今後も抜き取り検査による放射線監視を続ける方針で、安全性の確認と風評の払拭を両立させたい考えだ。なお、日本産食品への規制を残す国や地域は、中国や韓国、ロシアなど一部に絞られてきている。
政治的な緊張が高まる海の向こうで、日本の魚や米を載せた皿が静かに台湾の食卓へ運ばれていく光景は、事故後に積み重ねられた検査と対話の時間を、今回の決定が静かに映し出しているようにも感じさせる。
