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台湾の呉志中外交部政務次長が、最近イスラエルを極秘訪問していたことが関係者の証言で明らかになった。台湾は中国からの軍事的圧力が強まる中、ミサイル防衛などで先行するイスラエルとの協力に期待を寄せている。この静かな往来は、島の防空体制と外交バランスをどう変えようとしているのか。
ミサイル脅威の下で進む防空網づくり
台湾周辺では、中国軍機や艦艇の活動が常態化し、有事を想定した避難訓練や防空演習が市民生活の一部になりつつある。そうした不安の中で、ロイター通信が報じた呉氏のイスラエル訪問は、「空からの攻撃にどう備えるか」という切実な問いと直結している。
頼清徳総統が10月の演説で打ち出した多層防空構想「T-Dome」は、米国製パトリオットや国産「天弓」など既存のミサイルやレーダーをネットワークで結び、探知から迎撃までの時間を縮めて命中率を高める計画だ。イスラエルの防空システムを一部参考にしたとされ、住民の頭上に見えない盾を張る構想とも言える。
詳細な日程や会談相手は公表されていないが、台湾側は従来からイスラエルとの間で防衛技術やサイバー、ドローン対策などで「相互に学び合う関係」があると説明してきた。今回の極秘訪問について台湾当局は沈黙を守るものの、防空運用や技術協力の可能性を巡り、実務的な意見交換が行われたのではないかとの見方も出ている。
中国と中東情勢をにらむ難しい綱渡り
台湾は中国の圧力により正式な国交国がわずかに限られ、多くの国が北京のみを承認している。イスラエルもその1つで、台北との関係は在外事務所同士の実務交流にとどまる。それでも、2023年のハマス攻撃後に台湾がイスラエル支持を鮮明にして以降、イスラエル国会議員による台湾支援声明や高官の往来が相次ぎ、非公式な結びつきは強まってきた。
一方で、この接近は中東と中国をめぐる繊細なバランスもはらむ。中国は1988年からパレスチナ国家を承認し、台湾に対しても「一つの中国」原則を迫っている。林佳龍外交部長は、パレスチナが北京寄りだと批判する一方、ヨルダン川西岸の入植地にある医療施設への寄付計画が国際的な批判を浴びるなど、台湾の対イスラエル政策には人権と国益の線引きを巡る課題が突き付けられている。
ロイターやAP通信の報道によれば、台湾は今後もイスラエルとミサイル防衛や先端技術での協力を深めたい考えだが、公に示せる範囲には限りがある。中国の反発や中東世論を刺激せずに、防空の実効性と市民の安心感をどこまで高められるのか。呉次長の静かな訪問は、台湾が安全保障と価値外交の両立を模索する長い綱渡りの一歩にすぎないとの受け止めも広がっている。
参考・出典
- Taiwan's deputy foreign minister made secret trip to Israel, sources say
- Taiwan says 'T-Dome' to better integrate air defence system for higher kill rate
- Taiwan’s foreign minister says closer ties with Israel align with the island’s interests
- Deputy foreign minister made secret trip to Israel, sources say – Taipei Times
- Ministry of National Defense Republic of China – World Wide Web – 重要政策 – 國防施政要項 – 籌建武器裝備
