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高市早苗首相は12月2日、就任後初めて福島県を訪れ、福島第1原発の構内に足を踏み入れた。事故処理と廃炉作業の進捗について、原発を運営する電力会社の担当者から説明を受けたうえで、除染土の最終処分に向けた道筋を段階的に示す考えや、廃炉に国が最後まで責任を負う姿勢を語った。就任から2カ月あまりを経て実現したこの視察は、長期に及ぶ負担を誰がどのように背負うのかを改めて問いかけている。
現場に積み重なる時間と、首相訪問へのまなざし
事故から10年以上が過ぎた福島第1原発では、今も数千人規模の作業員が防護服に身を包み、汚染水処理やがれき撤去にあたっている。周辺には帰還が進んだ地域もあれば、依然として立ち入りが制限される区域も残る。首相の一行は厳重なセキュリティの中で、原子炉建屋周辺の様子や廃炉の工程表について説明を受け、現場の長期戦の実態に触れた。
説明では、溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出し時期や、処理水の保管・放出の状況など、技術的な課題が改めて示されたとされる。一方で、地元自治体の職員や住民代表は、工程表の進捗だけでなく、地域の生活再建とどう両立させるのかに関心を寄せる。作業が計画どおり進んでも、廃炉完了まで数十年単位の時間がかかることは変わらないからだ。
歴代の首相は就任から比較的早い段階で福島を訪れてきたが、高市首相の現地入りは10月の就任から約2カ月後となった。待たされたとの受け止めもある一方、「まず国会や外交日程をこなしたうえで来たのだろう」と冷静に見る声もある。福島の住民にとって重要なのは訪問の早さより、廃炉や除染土処分の行方について、暮らしの目線でどこまで説明し、約束を具体化していくのかだ。
政府が掲げる「道筋」は、どこまで見えているか
今回の視察で首相が強調したのは、除染で発生した土壌の最終処分に向けた「段階的な道筋」を示すという方針である。原発事故後の除染で生じた土は、現在、福島県内の中間貯蔵施設に集約されているが、仮置きにすぎない。高市首相は、2030年までに県外最終処分への大まかな方向性を示す考えを記者団に伝えた。
法律では、この除染土を2045年3月までに福島県外で最終処分することが定められている。政府は、放射性物質の濃度が低い土を公共事業の盛り土などに再利用し、最終的に埋設する量を減らす方針だ。しかし受け入れ先の自治体や住民には、風評被害や安全性への懸念が根強く、実証事業は限定的にとどまる。制度として目標年限や枠組みはあっても、実際にどこで、どのように処分するのかはなお見通せない。
前政権では、同じ課題に向けて閣僚会議を設ける構想が打ち出され、別の首相が福島第1原発を視察した際にも、除染土の再利用拡大が課題として挙げられていた。処理水問題をめぐっては、漁業者の不安に応える形で市場視察が重ねられた経緯もある。今回は、そうした個別の産業支援より、長期の廃炉と除染土処分のロードマップに焦点が当てられた印象が強いが、その違いをどう具体的な施策に落とし込むかは、これから問われる。
廃炉と除染土処分、その負担を誰が背負うのか
高市首相は記者団に対し、廃炉作業について「国が最後まで責任を負う」との趣旨を繰り返し示した。2030年以降も工程表を維持し、必要な予算や人材を確保していく方針だという。長期のコミットメントを言葉で示したこと自体は、地元にとって一定の安心材料になり得るが、財源の手当てや技術継承の仕組みなど、具体像はこれから詰められる。
負担の分担という点では、福島に中間貯蔵施設を抱える地域だけでなく、将来、除染土の受け入れ先となるかもしれない他県や、廃炉コストを電気料金や税金の形で負担する全国の利用者も当事者だ。処理水放出の際、遠く離れた漁港でも不安が広がったように、原発事故の影響は地理的な境界を越えて広がる。そうした広がりを前提に、誰にどのリスクをどこまで求めるのかという議論が欠かせない。
一方で、福島の住民からは「次の世代に決断を先送りしてほしくない」という声も聞かれる。政府が掲げる2030年までの「道筋」づくりは、その意味で一つの区切りになるが、単なる工程表の更新にとどまれば、長期の不安は解けないままだろう。12月2日の首相訪問が、負担の所在をあいまいにしたままの象徴に終わるのか、それとも、全国の人々が自分事として向き合うきっかけとなるのかは、これからの対話の積み重ねにかかっている。
